第三十三章 謎
それからしばらく歩くと、そこに両脇にスフィンクスの像のある、扉のついた壁があった。この奥が破邪の盾を収めた最後の部屋だろう。ミゼルの胸は希望で高鳴った。
しかし、その時、入り口の横のスフィンクスの像が、見る見るうちに生き物の姿になった。体はライオンだが、顔は人間である。一人は男、一人は女の顔だ。
「人間よ。この部屋に何の用がある」
スフィンクスたちは、軋るような、鳥の鳴き声に似た声で言った。
「破邪の盾を貰いに来た」
ミゼルは答えた。
「お前は、ここに来るまでに獣や亡霊たちを倒してきた。お前の武勇の力は認めよう。だが、破邪の盾を持つ者には、知恵が無ければならぬ。お前に知恵があるか、確かめさせて貰おう。この問いに答えられなければ、お前はわしに食い殺され、永遠に地獄の辺地にさまようのだ。それが怖ければ、ここから帰るがよい。逃げたとて誰もお前を責めまい。もっとも、無事に帰れるかどうかは分からぬがな」
「逃げはせぬ。何でも聞くがよい。スフィンクスよ」
「身の程知らずな人間め。では、問おう。
わしはライオンの力を持ち、人間の知恵を持っている。そして、獣にも人間にも無い霊力を持っている。この世にわしを倒せるものは一つしかないのだ。それは何であるか答えよ」
ミゼルの心に、一つの言葉が響き渡った。
「簡単な謎だ。古の神々ですら、勝てなかったものがある。それは、運命の力だ。お前たちの定めは、私に謎を破られることだったのだ」
悲鳴のような声とともに、スフィンクスたちは消え去った。
ミゼルは、先ほどの声は何だったのだろうと考えた。スフィンクスの問いに対する答は、自分が考えたのではなく、天から与えられたような気がした。
天にいる誰かが俺を見守っている、とミゼルは考えた。それはきっと、死んだ母、ナディアだろう。
ミゼルの前の扉は自然に開かれた。ミゼルは部屋に入って、そこに祭壇のような台があり、ビロードのような布の上に安置された破邪の盾があるのを見た。盾は静かな白い光を放っている。ミゼルがそれを手に取ると、心に何とも言えない安心感のようなものが広がった。これは破邪の盾の持つ霊力のためだろうか。
帰り道では、もはや怪物や亡霊たちは現れなかった。
ミゼルが試練の洞窟の入り口から顔を出すと、ピオばかりでなく、老神官とその娘、リリアも喜びの顔で彼を出迎えた。
それからしばらく歩くと、そこに両脇にスフィンクスの像のある、扉のついた壁があった。この奥が破邪の盾を収めた最後の部屋だろう。ミゼルの胸は希望で高鳴った。
しかし、その時、入り口の横のスフィンクスの像が、見る見るうちに生き物の姿になった。体はライオンだが、顔は人間である。一人は男、一人は女の顔だ。
「人間よ。この部屋に何の用がある」
スフィンクスたちは、軋るような、鳥の鳴き声に似た声で言った。
「破邪の盾を貰いに来た」
ミゼルは答えた。
「お前は、ここに来るまでに獣や亡霊たちを倒してきた。お前の武勇の力は認めよう。だが、破邪の盾を持つ者には、知恵が無ければならぬ。お前に知恵があるか、確かめさせて貰おう。この問いに答えられなければ、お前はわしに食い殺され、永遠に地獄の辺地にさまようのだ。それが怖ければ、ここから帰るがよい。逃げたとて誰もお前を責めまい。もっとも、無事に帰れるかどうかは分からぬがな」
「逃げはせぬ。何でも聞くがよい。スフィンクスよ」
「身の程知らずな人間め。では、問おう。
わしはライオンの力を持ち、人間の知恵を持っている。そして、獣にも人間にも無い霊力を持っている。この世にわしを倒せるものは一つしかないのだ。それは何であるか答えよ」
ミゼルの心に、一つの言葉が響き渡った。
「簡単な謎だ。古の神々ですら、勝てなかったものがある。それは、運命の力だ。お前たちの定めは、私に謎を破られることだったのだ」
悲鳴のような声とともに、スフィンクスたちは消え去った。
ミゼルは、先ほどの声は何だったのだろうと考えた。スフィンクスの問いに対する答は、自分が考えたのではなく、天から与えられたような気がした。
天にいる誰かが俺を見守っている、とミゼルは考えた。それはきっと、死んだ母、ナディアだろう。
ミゼルの前の扉は自然に開かれた。ミゼルは部屋に入って、そこに祭壇のような台があり、ビロードのような布の上に安置された破邪の盾があるのを見た。盾は静かな白い光を放っている。ミゼルがそれを手に取ると、心に何とも言えない安心感のようなものが広がった。これは破邪の盾の持つ霊力のためだろうか。
帰り道では、もはや怪物や亡霊たちは現れなかった。
ミゼルが試練の洞窟の入り口から顔を出すと、ピオばかりでなく、老神官とその娘、リリアも喜びの顔で彼を出迎えた。
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