その三 魔法の教え
ザラストに怒られたジルバは、ぶるぶるふるえました。よほどザラストがこわいのでしょう。
「このいたずらものめ。ハンスにはまだ本物の魔法はつかえぬ。力のない者が魔法を使うとあぶないのだ」
ジルバはこそこそとかくれました。
「ジルバは人間の言葉が話せるのですか」
「見てのとおりじゃ。動物の中には人間に近い心を持つものがおる。猿や犬がそうじゃ。鳥はずっと単純(たんじゅん)だが、うちのオウムのパロは百歳になる鳥だからお前よりずっとかしこい。ヘビやトカゲの心は人間とはまったくちがう。だが、なれた魔法使いなら彼らを命令にしたがわせるのはかんたんだ。だから、ヘビ、トカゲ、カエル、コウモリを見たら、それが魔法使いの手下でないか、気をつけることだ。悪い魔法使いもたくさんいるからな。ある魔法を使えば、動物と心で話すこともできるし、彼らに人間の言葉を話させることもできるが、他の人間がおどろくから、あまりやらないほうがいい。ジルバはお前になれているから、わしのいましめを忘れてうっかり話してしまったのだ」
「ぼくは早く魔法をおぼえたい。早く魔法を覚える魔法はないのですか。かしこくなる魔法とか」
ハンスの言葉にザラストはおどろいて言いました。
「お前はじゅうぶんにかしこい。そんなことを思いつくだけでもたいしたものだ。魔法とは、心の願いを本物にすることだから、願いを持って、それを信じることがたいせつなのじゃ。かしこくなりたければ、毎日そう願いなさい。しかし、お前の中に、かしこさのたしかなすがたがなければ、それはお前のものにはならないぞ」
「かしこさにすがたがあるのですか?」
「ある。それは、お前がかしこさという一言で言っているものを、よりこまかくくわしく考えることだ。たとえば、おぼえること、思い出すこと、見分けること、正しく考えること、かしこさにもいろいろある。大きくふくざつなものは実体化(じったいか)しにくく、小さくこまかなものは実体化、つまり本物にしやすい。たとえば、ハンス、カエルを想像(そうぞう)してみろ」
「そうぞう?」
「心の中で考えてみろ」
「考えました」
「そのカエルはどんな色だ」
「青です」
「大きさは。模様は。前脚に指は何本ある」
「ええと……わかりません」
ザラストに怒られたジルバは、ぶるぶるふるえました。よほどザラストがこわいのでしょう。
「このいたずらものめ。ハンスにはまだ本物の魔法はつかえぬ。力のない者が魔法を使うとあぶないのだ」
ジルバはこそこそとかくれました。
「ジルバは人間の言葉が話せるのですか」
「見てのとおりじゃ。動物の中には人間に近い心を持つものがおる。猿や犬がそうじゃ。鳥はずっと単純(たんじゅん)だが、うちのオウムのパロは百歳になる鳥だからお前よりずっとかしこい。ヘビやトカゲの心は人間とはまったくちがう。だが、なれた魔法使いなら彼らを命令にしたがわせるのはかんたんだ。だから、ヘビ、トカゲ、カエル、コウモリを見たら、それが魔法使いの手下でないか、気をつけることだ。悪い魔法使いもたくさんいるからな。ある魔法を使えば、動物と心で話すこともできるし、彼らに人間の言葉を話させることもできるが、他の人間がおどろくから、あまりやらないほうがいい。ジルバはお前になれているから、わしのいましめを忘れてうっかり話してしまったのだ」
「ぼくは早く魔法をおぼえたい。早く魔法を覚える魔法はないのですか。かしこくなる魔法とか」
ハンスの言葉にザラストはおどろいて言いました。
「お前はじゅうぶんにかしこい。そんなことを思いつくだけでもたいしたものだ。魔法とは、心の願いを本物にすることだから、願いを持って、それを信じることがたいせつなのじゃ。かしこくなりたければ、毎日そう願いなさい。しかし、お前の中に、かしこさのたしかなすがたがなければ、それはお前のものにはならないぞ」
「かしこさにすがたがあるのですか?」
「ある。それは、お前がかしこさという一言で言っているものを、よりこまかくくわしく考えることだ。たとえば、おぼえること、思い出すこと、見分けること、正しく考えること、かしこさにもいろいろある。大きくふくざつなものは実体化(じったいか)しにくく、小さくこまかなものは実体化、つまり本物にしやすい。たとえば、ハンス、カエルを想像(そうぞう)してみろ」
「そうぞう?」
「心の中で考えてみろ」
「考えました」
「そのカエルはどんな色だ」
「青です」
「大きさは。模様は。前脚に指は何本ある」
「ええと……わかりません」
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