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印刷物文化の時代は活字的精神の時代だった

貴重な歴史的資料の写真である。これと現在の秋葉原の写真を並べれば、約50年間での日本の文化の変質と、それに伴う日本人の精神の変質が示唆されるのではないか。

同じ活字でも、紙媒体の上に印刷された活字と、一瞬で消える電子上の活字は、読む者に与える精神的影響は異なる。後者から読み取られるものは「情報」だけである。その大半は精神の表面をかすめて過ぎ去るだけだろう。

今でも、私は、小説の類だけは紙媒体でないと読む気になれない。電子的な活字を見る時は「読んでいる」のではなく「検索している」だけである。その「検索」の習慣が長く続くと、精神が変質していく。つまり、「読み味わう」ことが不可能になり、「手早く、めぼしい情報を得たい」という焦りが心を突き動かすようになるのである。そのため、実は読書の習慣も今はほとんど無い。本を読む場合は、断片的な「情報収集」活動と、ストレス解消のために軽いエッセイなどを読むだけだ。自分の魂を動かし、精神に痕跡を残すような深い読書をする気力などない。それは私だけのことではないと思う。つまり、精神そのものが、簡単に書き換え可能なフラッシュメモリー(BSメモリー)化しているのである。




            

昭和51年 神田神保町


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