虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)は、真言密教の修法の一つで、虚空蔵菩薩の真言を百万遍唱えることで、記憶力増進や知恵の授与を願うものです。空海も実践したと伝わる修行で、過去に記録された資料や、現在も修行を行っている寺院もあります.
虚空蔵求聞持法の概要
- 目的:記憶力増進、知恵の授与、仏教経典の理解を深める.
- 修法:虚空蔵菩薩の真言を唱える。一般的には百万遍(100万回)唱えると言われています.
- 場所:静かな場所、山中などが選ばれる.
- 期間:百日間行うことが多い.
- 行者:虚空蔵菩薩の画像や像を前に、静かな場所で真言を唱える。修行期間中は食事や睡眠を制限し、厳しい修行を重ねることもあります.
真言
- 真言は「オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ」と唱えます.
- 「ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ」も用いられます.
虚空蔵菩薩
- 知恵や記憶を司る仏とされ、虚空蔵菩薩の力によって、あらゆる経典を記憶できると信じられています.
- 虚空蔵菩薩は、虚空がすべてを蔵するように、無量の知恵と福を備えた菩薩とされています.
空海と虚空蔵求聞持法
- 弘法大師空海も、虚空蔵求聞持法を実践したと伝えられています.
- 空海は、この修行で、経典の文言を暗記するだけでなく、生命の源に達する悟りの境地に至ったと言われています.
その他
- 虚空蔵求聞持法は、現在も一部の寺院や修道院で実践されています.
- 村松虚空蔵尊は、十三詣りの聖地として知られています.
- 太龍寺では、求聞持堂で虚空蔵求聞持法が修せられていると伝えられています.
- 白日孔氏著の「実践虚空蔵菩薩求聞持法」も参考になります。
- 夢人追記:「虚空蔵」とは「菩薩」ではなく、人間の脳である。それは最初は空っぽ(空虚)の庫だが、知識や知恵を「求め」「聞き」「持する」ことで宝の庫となる。そして、その「知識」とは、たとえば身体動作の記憶なども含まれる。だから空海はあれほどの能筆になったのである。優れた書を見て、その筆跡の動きを自分の手と架空の筆で空中に書き、その動作を(筆先が紙に触れ、紙を離れる感覚まで含めて)記憶すれば、あらゆる名筆のコピーが可能になるわけだ。「五筆和尚」とはその書ける書体の万能性を言ったものだろう。
- 「オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ」という真言を百万遍唱えるというのは、新しい知識を無意識の中に半永久的に刻み付ける体験をさせるということだ。たったこれだけの短い文句を唱える(おそらく、心の中で唱えるだけでいい)というのは、実に簡単な行為だが、それが「百万遍」という数字に恐れをなして、誰もやらないわけであるが、これは「何度も繰り返して覚える」という体験を教えるだけのことである。その経験が一度あれば、その後の「新知識を覚える」ことへの心理的抵抗や恐怖感が無くなり、記憶が容易になるということである。その真言自体の「意味」は実はどうでもいいのである。しかし、意味は無くても、ある種の心理的価値、呪術的価値があるわけだ。(ここでの「呪術」とは、無意識の効果と言ってもいい。)
- 人間の脳が「虚空」であるということは、実はそれが「無限」である、ということである。そして、そういう意識を持つこと自体が脳の限界を広げるのである。
- 心理的抵抗感を無くすために、「(オン・)バサラ」は「拝啓」、「ソワカ」は「敬具」くらいのイメージとするのもいい。つまりは全体が仏への祈願のメッセージだ。
- 全体は「御仏よ、新たな能を下賜くださいませ」という感じか。「アラタンノウ」を「新たな能」とした駄洒落である。「下賜」は「恵みを垂らす(タラク)」の洒落。
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