学校で習う歴史は、出来事だけが書かれていて、その「意味」はまったく書かれていない。まあ、数学や科学同様の、いや、それ以上の暗記科目である。ただ、事実そのものの面白さがあるので、理系科目ほど不人気教科ではないだけだろう。(もちろん、理系好きもいるが。)
で、市民図書館から借りてきた、子供向けの世界史の本(漫画のような挿絵入り)を読んで、私が長い間意味を理解しかねていた、ナポレオンのエジプト遠征の意味が分かり、ついでに、ナポレオンが「革命の簒奪者」であることを明快に意味するブリュメール18日のクーデターのことも初めて知った。
もうひとつ、ナポレオンの諸国との戦争では、彼が「革命の守護神」と思われていたため、各国の民衆から食糧などの支援があり、そのため軍隊の荷物が少なくて済んだために、彼の電撃的進軍が可能だった、という、「理系的」な理解が可能になったのが、この読書の功徳だった。子供向けの「学習本」というのは、大人にこそ有益なようだ。
ただし、歴史的人物の美化、英雄化が多く、また、米大陸での白人によるインディアン虐殺と略奪などにはまったく触れていないのは、実は米政府による日本統治の厳しい検閲が裏にあったのだと思う。
ナポレオンのエジプト遠征とは、要は、イギリスとの海戦を避けた、ナポレオン自身による「楽な戦争」の選択だったということだ。当時のエジプトは、マルムーク(戦争奴隷)の支配する、烏合の衆地方政府、軍隊だったわけである。奴隷というのは上との戦争(反乱)では凄い力を見せるが、横(他国)との戦争では、「戦争の意味がない(国が滅びても、それ以前の奴隷状態に戻るだけだ)」から、弱いのである。楽な戦争だと分かっていたから、学者などをたくさん引き連れての遊覧旅行でもあったわけだ。だから、フランス国内の情勢が怪しくなると、エジプトを放り投げて少数だけで帰国し、ブリュメール18日のクーデターで国を奪ったわけだ。
ついでに言うと、ロゼッタストーンには、実は三か国語(三種類の文字)で同じ文章が書かれてあるらしく、そのひとつであるギリシャ語が読めれば、他の象形文字などを解読する大きな手掛かりになったわけで、ロゼッタストーン解読は、さほどの偉業でもないわけである。
文末が「わけだ、わけだ」だらけだが、解けた謎が多いので、そうなったわけである。
念のために言えば、私はナポレオンの「ナポレオン法典」編纂事業は人類に対する大きな貢献だと思っているし、彼が諸国に対してフランスを防衛した戦争での軍人としての能力と貢献は評価している。しかし、彼が自分自身を守り、その権力を高めるためにやった後半生の愚劣な戦争はまったく彼の価値を下げるものだと思う。つまり、戦争マニアの彼は、ギャンブルの辞め時を知らなかったのである。もっとも、「戦争は民主主義国家では遂行困難である」というのが戦争の基本定理だろう。戦争で勝利する国は「一時的独裁国家(全体主義国家)」になる必要があるのである。
これもついでに書いておく。「簒奪」は普通の国語辞書には出てこない。歴史学特有語と言うべきだろう。私の言う「革命の簒奪者」とは、共和国指導者の地位の簒奪者の意味である。
簒奪(さんだつ)とは、本来君主の地位の継承資格が無い者が、君主の地位を奪取すること。 あるいは継承資格の優先順位の低い者が、より高い者から君主の地位を奪取する事。 ないしそれを批判的に表現した語。 本来その地位につくべきでない人物が武力や政治的圧力で君主の地位を譲ることを強要するという意味合いが含まれる。
(追記)「暗黒事件」(岩波文庫 水野亮訳 上巻48P)
「権利といふことになれば、」と、公証人のグレヴァンはいつた。「ブールボン王朝の方は、ボナパルトが霧月18日に共和国に対して陰謀を企てる権利を持ってゐた以上に、ボナパルトに対する不穏計画を立てたり進めたり実行したりする権利があるね。ボナパルトは共和国を母として生まれた子供のくせに母親を暗殺したのだし、ブールボン王家の方はもとゐた家に戻りたいといふ、ただそれだけの話なんだから」
(以下引用)
で、市民図書館から借りてきた、子供向けの世界史の本(漫画のような挿絵入り)を読んで、私が長い間意味を理解しかねていた、ナポレオンのエジプト遠征の意味が分かり、ついでに、ナポレオンが「革命の簒奪者」であることを明快に意味するブリュメール18日のクーデターのことも初めて知った。
もうひとつ、ナポレオンの諸国との戦争では、彼が「革命の守護神」と思われていたため、各国の民衆から食糧などの支援があり、そのため軍隊の荷物が少なくて済んだために、彼の電撃的進軍が可能だった、という、「理系的」な理解が可能になったのが、この読書の功徳だった。子供向けの「学習本」というのは、大人にこそ有益なようだ。
ただし、歴史的人物の美化、英雄化が多く、また、米大陸での白人によるインディアン虐殺と略奪などにはまったく触れていないのは、実は米政府による日本統治の厳しい検閲が裏にあったのだと思う。
ナポレオンのエジプト遠征とは、要は、イギリスとの海戦を避けた、ナポレオン自身による「楽な戦争」の選択だったということだ。当時のエジプトは、マルムーク(戦争奴隷)の支配する、烏合の衆地方政府、軍隊だったわけである。奴隷というのは上との戦争(反乱)では凄い力を見せるが、横(他国)との戦争では、「戦争の意味がない(国が滅びても、それ以前の奴隷状態に戻るだけだ)」から、弱いのである。楽な戦争だと分かっていたから、学者などをたくさん引き連れての遊覧旅行でもあったわけだ。だから、フランス国内の情勢が怪しくなると、エジプトを放り投げて少数だけで帰国し、ブリュメール18日のクーデターで国を奪ったわけだ。
ついでに言うと、ロゼッタストーンには、実は三か国語(三種類の文字)で同じ文章が書かれてあるらしく、そのひとつであるギリシャ語が読めれば、他の象形文字などを解読する大きな手掛かりになったわけで、ロゼッタストーン解読は、さほどの偉業でもないわけである。
文末が「わけだ、わけだ」だらけだが、解けた謎が多いので、そうなったわけである。
念のために言えば、私はナポレオンの「ナポレオン法典」編纂事業は人類に対する大きな貢献だと思っているし、彼が諸国に対してフランスを防衛した戦争での軍人としての能力と貢献は評価している。しかし、彼が自分自身を守り、その権力を高めるためにやった後半生の愚劣な戦争はまったく彼の価値を下げるものだと思う。つまり、戦争マニアの彼は、ギャンブルの辞め時を知らなかったのである。もっとも、「戦争は民主主義国家では遂行困難である」というのが戦争の基本定理だろう。戦争で勝利する国は「一時的独裁国家(全体主義国家)」になる必要があるのである。
これもついでに書いておく。「簒奪」は普通の国語辞書には出てこない。歴史学特有語と言うべきだろう。私の言う「革命の簒奪者」とは、共和国指導者の地位の簒奪者の意味である。
簒奪(さんだつ)とは、本来君主の地位の継承資格が無い者が、君主の地位を奪取すること。 あるいは継承資格の優先順位の低い者が、より高い者から君主の地位を奪取する事。 ないしそれを批判的に表現した語。 本来その地位につくべきでない人物が武力や政治的圧力で君主の地位を譲ることを強要するという意味合いが含まれる。
(追記)「暗黒事件」(岩波文庫 水野亮訳 上巻48P)
「権利といふことになれば、」と、公証人のグレヴァンはいつた。「ブールボン王朝の方は、ボナパルトが霧月18日に共和国に対して陰謀を企てる権利を持ってゐた以上に、ボナパルトに対する不穏計画を立てたり進めたり実行したりする権利があるね。ボナパルトは共和国を母として生まれた子供のくせに母親を暗殺したのだし、ブールボン王家の方はもとゐた家に戻りたいといふ、ただそれだけの話なんだから」
(以下引用)
ブリュメール18日のクーデタ
1799年、ナポレオンが総裁政府から実権を奪ったクーデタ。一般にこれによってフランス革命は終わりを告げたとされる。
1799年11月、ナポレオンが決行した総裁政府を打倒したクーデター(政変)。ナポレオンは統領政府の第一統領となり、独裁権力樹立の第一歩となり、同時にこれによってフランス革命は終わったとされる。ブリュメールとは革命暦の霧月のことで、ブリュメール18日は現行暦では11月9日に当たる。
先月にエジプト遠征から急きょ帰ったナポレオンは、総裁の一人シェイエス、警察大臣フーシェとクーデタを計画、元老議会でアナーキストの蜂起計画をでっち上げて防衛のために両院をサンクルーに移す事を提案、認めさせる。10日、軍隊の駐屯するサンクルーのオランジェリで五百人議会開催、議長はナポレオンの弟リュシアン。「独裁者を倒せ!」という議員の怒号に対し、兵士を議場に動員、議会を解散させ、臨時の三人の統領政府(執政政府)を樹立、憲法改正の審議入りを宣言した。三人の統領とはナポレオン、シェイエス、ロジェ=デュコ。こうして、民衆の圧力に依って体制が替わるという「革命」は終わり、軍事クーデタで政体が変更される事となった。
先月にエジプト遠征から急きょ帰ったナポレオンは、総裁の一人シェイエス、警察大臣フーシェとクーデタを計画、元老議会でアナーキストの蜂起計画をでっち上げて防衛のために両院をサンクルーに移す事を提案、認めさせる。10日、軍隊の駐屯するサンクルーのオランジェリで五百人議会開催、議長はナポレオンの弟リュシアン。「独裁者を倒せ!」という議員の怒号に対し、兵士を議場に動員、議会を解散させ、臨時の三人の統領政府(執政政府)を樹立、憲法改正の審議入りを宣言した。三人の統領とはナポレオン、シェイエス、ロジェ=デュコ。こうして、民衆の圧力に依って体制が替わるという「革命」は終わり、軍事クーデタで政体が変更される事となった。
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