民主党にも優れた人物はいるものだ。出が京大で、しかも理系だから考え方が論理的で明晰で、話が分かりやすい。安倍一味の非論理的言辞とは雲泥の相違だ。
私はもともと、東大に行きたがる権力志向の人間よりは、京大に行くような人間が好みなのである。学問的にも東大よりは京大のほうが良い実績を残しているはずだ。
(以下引用)
民主党・山井議員 「労働者は歴史上最大の危機を迎えている」(日刊ゲンダイ)
http://www.asyura2.com/15/senkyo181/msg/857.html
民主党の山井和則衆院議員(C)日刊ゲンダイ
民主党・山井議員 「労働者は歴史上最大の危機を迎えている」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158257
2015年3月23日 日刊ゲンダイ
■派遣法改悪、残業代ゼロ、クビ切り自由化…
今年の春闘、大企業はどこもかしこも大幅アップに沸いているが、その裏側では労働者イジメの悪法が次々と国会に提出されようとしている。それも前代未聞の強引さで。働く人にかくも冷酷な安倍政権の実態と、法改悪の恐ろしさを野党の論客、民主党衆院議員の山井和則氏(53)に聞いてみた。
――春闘は史上最高ベアに沸いて、サラリーマンも浮かれているように見えますね。
実は、大ピンチなのです。今の国会は労働者にとって、歴史上最大の危機を迎えている。なぜかというと、「悪の3点セット」のような法案が出されて、数の力で押し切られようとしているからです。1つは派遣法改悪、2つ目は残業代ゼロ法案、3つ目は年内に審議会で議論される首切り自由化法案です。大企業が今度の春闘で景気よく賃上げに応じているのは、今後、正社員を派遣に切り替え、残業代をゼロにできて、金銭さえ支払えば、解雇を自由にできるようになるからです。
――賃上げしても、総人件費で見れば、コストカットが見込める?
その通りです。だから、大盤振る舞いできるんです。サラリーマンは騙されたらいけません。
――具体的に、この間、閣議決定された派遣法の改正、それと、近日中に閣議決定される残業代ゼロ法案ですね。どの辺が問題なのでしょうか?
まずは、これまで雇用労働法制というのは、労使合意が大原則だったんです。法案提出前に厚生労働省の審議会である労働政策審議会で労使の代表が議論して、中身を詰めて合意する。そうやって、法案が出てくるので、国会でも与野党ともに賛成する。逆に、労使が合意していない法案は出てこない。これが慣行だったんですね。7年前、第1次安倍政権は労使合意ができなかったので、ホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ)の法案提出を断念しました。ところが、第2次安倍政権になってから、この慣行が崩れた。労働政策審議会で労働側が反対した法案を国会に出してきて、強行採決でもなんでもやって、成立させようとしている。政策決定過程が根本から変わってしまった。
――数の力の驕りですね。
その通りです。それに財界、経団連が悪乗りして、従来からの悲願である法改悪を一気にやってしまえというムードになっている。働く者からすれば、地獄の始まりですよ。
■正社員の求人はどんどん減り、一生派遣が固定化
――派遣法改正で、これまで「最長3年間」だった派遣期間は条件付きで無期限派遣が可能になります。通訳など「専門26業務」に限定されていた無期限派遣の規制も取っ払われます。派遣労働者を3年ごとに入れ替えて、ずっと、その仕事を派遣に任せることも可能になりますね。
ドイツでは今から12年前、最長派遣期間の上限規制を撤廃しました。その結果、2004年は38万人だった派遣が2011年には88万人に倍以上に増えました。規制を撤廃すれば、日本でも間違いなく派遣が増えて、正社員の求人が減ります。一生派遣の若者が激増します。
――政府は正社員が増えると言っています。
派遣労働者の方から何十回も話を聞いているんですが、派遣の方々が共通して訴えているのは、「一度、派遣になると、正社員になれない、なりにくい」というシビアな実態です。履歴書の職歴にいくつもの会社の名前が並び、ずっと派遣だったとわかると、それだけで落とされてしまう、というんですね。しかも、派遣は40、50代になると賃金が下がっていく。受け入れ先も減ってくる。人生設計が成り立たないんです。だから、なかなか結婚もできないんです。半年先、1年先の生活が不安定であれば、求婚できない。人口減に拍車がかかり、社会が荒廃することになります。
――政府は働き方の自由度、選択肢が広がるとも言ってますね。
中には一時的に派遣で働きたい人もいるでしょう。でも、厚労省の派遣労働者実態調査(2013年)によれば、「正社員として働きたい」人が全体の6割もいる。それに、働き方の選択肢が広がるというのであれば、同一労働同一賃金、均等待遇が大前提です。欧州では当たり前で、違反すれば罰則規定もある。ところが、日本は派遣と正社員の時給を比べると2倍以上の開きがある。育児休業を取っている女性は派遣は4%、正社員は40%です。全然待遇が違うじゃないですか。厚労省の課長がいみじくも言ったように、「派遣労働はモノ扱い」だったし、それを拡大させるのが今回の改悪です。
――もうひとつ、政府は法案に雇用安定措置を付けているとして、雇用は悪化しないと強弁している。
派遣労働者が引き続き就業を希望する場合は、派遣会社が派遣先に直接雇用の依頼をする。あるいは新たな派遣先を提供したり、派遣元において無期雇用する、などの措置のことを言っているのでしょうが、ちゃんちゃらおかしい。派遣会社から直接雇用を頼まれて、派遣先企業が簡単に雇いますか。いい人材であれば、頼まれなくても雇うし、そうでなければ雇わない。派遣会社が新たな派遣先の提供? 当たり前じゃないですか。それが派遣会社の本来業務でしょう。
語るに落ちたのは、修正法案に「派遣労働が大幅に増えたときは法律の見直しを検討する」という文言が入ったことです。政府は「法改正で派遣は増えない」と言い張っていたのに、なぜ、こんな文言を入れるのか。自ら欠陥法案(派遣を増やす)であることを認めたようなものです。
■安倍政権は世界一労働者が過酷な国を目指している
――残業代ゼロ法案(労働基準法改正)の方はどうですか?
この法案の対象になるのは年収1000万円以上で、金融アナリストなどの高度プロフェッショナルとされてきました。ところが、法案には新たな対象も盛り込まれます。企画、立案、調査、分析に加えて、営業や管理にまで「残業代ゼロ」の裁量労働制の対象を拡大するのです。
――もともと経団連や財界は対象を拡大しようとして、年収400万円以上とか、全労働者の10%とか言ってきましたね。
自分は年収1000万円以下だから関係ないと思っていたら大間違いなんです。高度プロフェッショナルで、管理職ではない人は数十万人ですが、拡大される裁量労働制は年収が200万円でも対象になり、100万人以上に増えかねない。厚労省に何万人の営業マンが対象ですか、と聞いたところ、「分からない」と答えたくらいです。こんなのが導入されたら地獄ですよ。これまでは100個売ることがノルマだった営業マンがいきなり、150個のノルマを課されて、明日から裁量労働制だ、と言われれば、残業代ももらえなくなるのです。
――それは断れない?
上司に言われて断れますか? なかなか断れないと思います。いま、ちまたではどういう本が売れているか知っていますか? どうすれば残業代を払わずに済むのかという経営者向けのハウツー本です。そこには「裁量労働制を導入せよ」と書いてある。
――ちょっと待ってください、高度プロフェッショナルと違って、裁量労働制の方は夜間手当とか、休日手当は払われるんですよね?
法的にはそうですが、実際はほとんど払われていません。裁量労働制の対象業務はタイムカードになじまないケースも多く、全体の42%が労働時間が不明なので、過労死しても労災認定されません。
――高度プロフェッショナルの方も年収1000万円以上という目安がすぐに下がるんじゃないか、と懸念されていますね。
塩崎大臣に国会質問しました。「先のことはわからない」と否定しませんでした。今度の法案では極端な話、24日間、ぶっ続けで24時間、残業代ゼロで働かせることもできる。過労死が激増する恐れがあります。
――そもそも、安倍内閣はなぜ、こんな労働者イジメに邁進するのか。人口は減るし、経済はヘタってくるし、いいことはひとつもないでしょう?
安倍政権が目指しているのは世界で一番、企業が活躍しやすい国です。それは裏を返せば、労働者が世界で一番、過酷な国になるのです。
▽やまのい・かずのり 京大工学部卒、大学院で修士。2000年の衆院選で初当選。現在6期目。元厚労政務官。