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日米の「自我」の強さの違い

下に引用する文章は、或る大学の現代国語の入試問題だが、題材となっている文章自体が、現代日本における「いじめ・自殺問題」の根本に触れているかと思うので、その参考として載せておく。
問題のポイントを簡単に言えば、「なぜ日本ではいじめられた人間が自殺するのか」ということである。(もちろん、これは引用した文章の趣旨とは異なるものだが。)
それを「日本人の自我の弱さ」と断定するのは、いじめ被害者に酷だろうが、「ではなぜ、アメリカ人の自我はあれほど強いのか」、という問題に置き換えてもいい。アメリカ人も何かに絶望して自殺はするだろうが、少なくとも「いじめられて自殺する」ことは無いのではないか。それくらいならどこかから銃を持ち出してクラス全員を射殺する気がする。そして私はそのほうが「健全だ」と思うのである。
当たり前の話だ。なぜいじめ加害者でなく被害者のほうが死ぬ必要があるのか。


(以下引用)上に書いた主旨からは不要ではあるだろうが、入試問題としての問いの部分も載せておく。自分の「読解力」を検討するのも面白いだろう。



練習問題1 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(関西大学・文・改)


 


①二、三年前のこと、私がアメリカのある大学に滞在している時、日本から友人の一人が、私の興味を持ちそうな話題を選んで、新聞の切抜きを送ってくれた。その中に、近ごろ中学生・高校生の自殺の原因として、「自分の心をすっかり打ちあけてとことんまで話のできる相手が誰もいない悩み」が大きな比率を占めているという記事があった。学校の先生は悩み事の相談に乗ってくれない。同級生はみな受験のライバルで、心を打ちあけることなど思いもよらないし、両親はただ勉強しろの一点ばりで、話にもならない。自分はこの孤独にもう耐えられないというのである。


②私はたまたま担当していた大学院の講義が、日本人の自我の構造と言語表現の関係にふれるものだったので、早速この話を学生たちにして、どう思うかと尋ねてみた。驚いたことに、何人かの学生がおかしくてたまらないという様子で笑い出したのである。私が理由をただすと、一人が次のように答えた。


③私は本当に大切なことは、友人はもちろん、親にも話したことがない。先生や他人と相当深くいろいろ議論はするが、それは自分の心の中にある大事な問題について自分で決定する手がかりを得るためであって、問題そのものを打ちあけることはしないし、ましてその解決を他人から教わろうとは思わない。個人が本当に個人である部分は、他人に言えない部分であって、それを明かすことは自分の存在を危険にさらすようなものだ。だから、何もかも心をすっかり打ちあける他人がいないことで自殺するなど愚の骨頂である、というような答であった。


④私は少々唖然として他の者の意見も求めてみた。女子学生の一人は、自分も大体同意見で、本当に自分にとって大切なことは夫にも決して言ったことがないと言う。そして自分以外の人間に、自分の本当の気持ちなど分かるはずがないとつけ加えるのだった。


⑤これは一つの挿話にしかすぎないことであるが、しかしこの話ほど私がこれから述べようとする、日本人にとって、自分とは何か、相手とは何かの問題を解明するための適切な糸口を与えてくれるものもないと思うのである。


  


問1 筆者はどのような問題を考察しようとしているのか、文中から適切な部分を抜き出せ。


 


問2 第三段落(③)で述べられたアメリカ人学生の考えを簡潔にまとめよ。


 


問3 本文中の日本人の自我について、最も適当なものを次から選べ。


 


 ① 日本人は、重大な問題を心の中にじっとしまってその重みに耐えていく力がきわめて弱い。


      日本人は、身近な人間には心を許すが、他人にはなかなか心を許さない。


      日本人は、大事な問題と些細な問題を区別して、大事な問題は他人には打ちあけない。


      日本人は、親兄弟や友人を第二の自我として、それにすべての判断をゆだねている。


      日本人は、集団性が自我の中に組み込まれており、主体性が無い。




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