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「ねじの回転」と「信用できない語り手」

ヘンリー・ジェイムズ「ねじの回転」読了。
傑作だが、読み方に注意が必要。つまり、ドストエフスキーの「未成年」の時にも言った、「信用できない語り手」の物語として、語られた内容の「裏の意味」あるいは「真実の出来事は何か」を考えながら読まないと、実に朦朧とした怪談にしか思えないのである。だが、そういう意識で読むと、これは単なる幽霊話とは次元の違う、「人間の心理の恐ろしさ」を描いていると分かる。
「ドグラマグラ」とは違って、この語り手は読み手にはまったく正常な精神の持主と思われるだろう。冷静で善良な女性としか思えない。だが、話が進むに伴って起こる「異常な出来事」は、彼女にしか見えないのである。ならば、それは彼女の精神の異常としか合理的には解釈不可能だ。その精神の異常の原因となるのは、彼女の出自であり、劣等感であり、その劣等感の裏返しの高慢な自尊心だろう。彼女が精神異常者であり、周囲の人間はすべてまともな精神の人間である、と解釈した時、この物語の悲劇性が理解できるわけだ。
もちろん、この話をただの幽霊話として読むこともできるし、語り手こそが被害者だと考えることもできるだろう。だが、上に書いた視点で読む場合は、「普通の人間の精神が崩壊していく」過程の記録となり、まさに「文学」そのものとなる。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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