9月29日、国連人権理事会で「同性愛行為が死刑の対象になること」に対して非難する決議が出されたが、日本はこれに反対票を投じた。
同性間性行為が死刑になることに対して、日本は「仕方がないと思っている」という立場なのだろうか。
今回の決議案はベルギー、ベナン、コスタリカ、フランス、メキシコ、モルドバ、モンゴル、スイスの8ヶ国が主導して提案。
Pink Newsによると、人権理事会に加盟している国47カ国のうち、今回反対したのは、ボツワナ、ブルンジ、エジプト、エチオピア、バングラデシュ、中国、インド、イラク、日本、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国の13カ国。
キューバ、韓国、フィリピン、インドネシア、チュニジア、ナイジェリア、ケニアは棄権した。
UN WebTVより
今回、日本が反対票を投じたことについて、高岡法科大学の谷口洋幸教授は以下のように指摘する。
- 反対しているいくつかの国は「死刑の存続、廃止の議論については文化や伝統、政治状況などの事情から、国が決めることだ」と、国家主権の枠内で考えるということを明記するよう求めたが否決。そのため今回の決議案そのものへ反対票を投じた。
- 日本は、国内で死刑制度を残していることもあり、「死刑廃止・モラトリアム(適用猶予)を目論む決議には賛成できない」という立場。なので、同性間性行為への死刑廃止については”明確に”反対したわけではないというのが前提。また、2015年の死刑問題決議でも反対票を投じているため、投票行為は一貫している
- しかし、前回は「死刑制度の廃止」が議論されたが、今回はそうではなく、「平等・無差別の権利」との抵触、つまり「死刑の適用方法」が議論のテーマだった。そのため「精神・知的障害、18歳未満」「背教・不敬・姦通・合意ある同性間性行為」に対する死刑適用の廃止が求められていた。
- さらに、決議の提案国は「死刑の廃止・モラトリアムの義務づけ決議ではない」と説明していて、死刑制度がある国でも賛成して問題ないように練られていた。賛成できなくても棄権することができたはず。反対したということは、死刑制度の適用において「平等・無差別の権利」を確保しないととられても仕方がない。
- にもかかわらず、日本は「死刑廃止・モラトリアムは義務じゃないから、決議に反対する」と表明した。これにどれだけの意味があったのだろうか。
国連のLGBTコアグループに参加している日本。これまで、国際人権理事会ではLGBTの権利に関して支援的な態度をとってきたそう。今回の反対票は明確に同性間性行為への死刑廃止について反対しているわけではないかもしれないが、それでもこの反対票によって伝わってしまう政治的な効果は大きいのではないか。
未だ国内にもLGBTを保護/承認する法律はない。10月10日は衆議院選挙の公示日だが、LGBTに関する政策は、いくつかの党の公約にも既に取り上げられている。国内外でLGBTの権利に対する立場を明らかにしていく必要がある。
プロフィール
松岡宗嗣(Soshi Matsuoka)
1994年名古屋市生まれ。オープンリーゲイの大学生。LGBT支援者であるALLY(アライ)を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を主催。SmartNews ATLAS Program
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