新型コロナウイルスへの対応に追われる安倍政権が、野党時代の言動によって苦しい立場に立たされている。いずれも東日本大震災に関するもので、旧民主党政権への追及が「ブーメラン」となって返ってきた格好だ。
森雅子法相は9日の参院予算委員会で震災直後の状況に触れ、「検察官は福島県いわき市から最初に逃げた」と発言。2日後に「個人的見解だった」として撤回に追い込まれた。
福島県選出の森氏は野党議員だった震災当時、江田五月法相(当時)らとの質疑で「逃走」疑惑を繰り返しただしており、野党は過去の発言との整合性を追及。新型コロナウイルス対策の法案審議に影響を与えた。
一方、政府は10日に新型コロナウイルスの感染拡大を、公文書管理ガイドラインに基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定した。これにより、政府内の関連する会議は、議事録作成が義務付けられた。
自民党は震災当時、旧民主党政権が重要会議の記録を残していなかったことを厳しく批判。これをきっかけに、ガイドラインが見直された経緯がある。
ただ、今回の対応をめぐっては、2月27日に安倍晋三首相が呼び掛けた全国一斉休校の方針が、首相と一部側近らの非公式協議で決まったことが判明。安倍政権はこれを「議事録作成の対象外」としており、野党は「歴史の検証に不誠実」(立憲民主党の蓮舫参院幹事長)と批判している。