「この世界の片隅に」の完成披露舞台挨拶が、本日9月9日に東京・スペースFS汐留にて開催され、主人公に声を当てたのん、監督の片渕須直、原作者のこうの史代が登壇した。
こうののマンガをもとにした本作は、戦時中の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いてたくましく生きる女性・すずの姿を描く物語。
片渕がこの原作に出会い映画化を決めてから、約6年かかって完成した本作。花束を持って登場したのんは、片渕にそれを手渡し「監督、(完成)おめでとうございます」と祝福する。続いて客席に向かって「すずさん役をやらせていただいた、のんです。素晴らしい作品に参加させていただき、すごくうれしいです」と挨拶した。
完成作品を観た感想を、のんは「どんなときでも普通の暮らしっていうのがあって、そこを生きていかないといけないんだと感じました。戦争が1つのものとしてあるのではなく、生活に隣り合わせで迫ってくるのが怖いと思いました。だからこそ生活が素晴らしいと思える作品だと感じました」と述べる。片渕やこうのと並んで作品を鑑賞したそうで、「めちゃくちゃ緊張しました。ビクビクっていう感じで。すみません、失礼しますって思ってました」と控えめにコメントし、片渕らを笑わせた。
片渕は、鑑賞中のこうのについて「え、ここで!?みたいなところでハンカチを出してました」と明かす。それを受けてこうのは「悲しい映像よりも、楽しいところや、すずさんがみんなに優しくされているところでほろっときました」と告白。本作でアニメ映画初主演を果たしたのんは、「収録のときも思ったんですが、声が入っていなくても、映像だけで泣けてしまいました。すごく……いいです」とその魅力をアピールした。
主人公・すずと自らの共通点を聞かれたのんは、「ぼーっとしてるって言われるところ。だけど気の強いところやパワフルなところにも共感しました。そういう共感する部分から、共鳴させていくというふうにがんばりました」と答える。アフレコ時のことを片渕が「なぜすずさんがこう言うのかわからない、といったふうに、質問をたくさん投げてもらった。その質問に答える中で、自分でも作品の本質を捉え直せた。のんちゃんが、演じるだけではなく、すずさんをきちんと理解する役回りをやってくれたんです」と回想すると、のんは「すごくしつこかったですよね……? しつこすぎて大丈夫かなと思ってたんですが……ありがとうございます」と返した。
最後の挨拶では、こうのが「のんさんの声のおかげで、物語の中に明るさが入った。原作にはない素直さがあるのではないかと思います。芯の強さもあって、とってもよくできてるなと思いました」と、片渕が「広島や呉の町をきちんと描くということをやってきたのですが、それも全部すずさんの実在を感じたかったから。のんちゃんに声をやってもらって本当によかった。すずさんが血の通っている人として映画の中で存在できたんです。すずさんをどうか応援していただけるとありがたいです」と挨拶。そしてのんは「生きるっていうことだけで涙がぼろぼろあふれてくる、素敵な作品だと思います。ご家族で観ていただけると、大切なものを共感できるんじゃないのかなって思います。ぜひ皆さんで観てください」とイベントを締めくくった。
「この世界の片隅に」は11月12日より東京・テアトル新宿、ユーロスペースほか全国でロードショー。