食事が終わって次の間(ま)に出ると、ここは小さいサロンめいたところで、柔らかい椅子、ソファなどの脚の短いのをきわめて多く据えている。ここで珈琲の饗応がある。給仕の男が小杯に焼酎の類(注:ウォッカの類か)をいくつか注いだのを持ってくる。主人のほかには誰も手に取らない。ただ大隊長だけは「私一個人としては、シャルトリョオス(注:ワインの類か)を」と言って、それを一息に飲む。この時、私の後ろのほの暗いあたりで「一個人、一個人」と怪しい声で呼ぶ者があるので、驚いて振り返って見ると、この部屋の隅に大きな針金の籠があって、その中の鸚鵡が、以前から聞いていた大隊長の言葉を真似したのである。姫たちが「まあ、失礼な鳥だこと」と呟くと、大隊長も自ら声高に笑った。
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