私とメエルハイムはひとつ部屋で、部屋は東向きである。ムルデの河波は窓のすぐ下の礎石(いしずえ)を洗って、向こうの岸の草むらは緑がまだ色褪(あ)せず、その後ろの柏(かしわ)の林に夕靄(もや)がかかっている。流れは右手の方で折れ、こちらの陸が膝頭のように出ているところに田舎家が二、三軒あり、真っ黒い粉挽き車の輪(注:水車の輪か)が中空に聳(そび)え、左手には水に臨(のぞ)んで突き出した高殿の一間があり、このバルコニーめいたところの窓が、眺めているうちに開いて、少女の頭が三つ四つ、おり畳(かさ)なってこちらを覗いていたが、白い馬に騎(の)っていた人はいなかった。軍服を脱いで丸テーブルの傍へ寄ろうとしたメエルハイムは、「あちらは若い婦人たちの部屋である。失礼ながら、その窓の戸を早く閉ざしてはもらえないか」と私に頼んだ。
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