日が暮れて食堂に招かれ、メエルハイムと共に行く折、「この家に若い姫たちの多いことよ」と探りを入れると、「もともとは六人いたが、一人は私の友人であるファブリイス伯に嫁いで、残っているのは五人である」「ファブリイスとは国務大臣の家ではないか」「その通りだ。大臣の夫人はここの主人の姉で、私の友というのは、大臣の嫡子である」
食卓に就いてみると、五人の姫君がみな思い思いの粧(よそお)いをしている、その美しさは誰が一番であるとも言えないが、年長の一人が上着もスカートも黒いのを着ている様子が珍しいと見ると、これが先に白い馬に騎(の)っていた人であった。外(ほか)の姫君たちが日本人を珍しがって、伯爵夫人が私の軍服を褒める言葉の言葉尻について、「黒い地に黒い紐がついてるので、ブラウンシュワイヒの士官に似ている」と一人が言うと、桃色の顔をした末の姫が、「そうでもない」と、まだ幼くも卑しむ様子を隠さずに言うと、皆おかしさに堪えず姫の発言を笑ったので、赤らめた顔をスープの皿の上に低(た)れたが、黒い服の姫は睫(まつげ)さえも動かさなかった。しばらくして幼い姫が先ほどの無礼の罪を償おうと思ったのだろうか、「でも、あの方の軍服は上も下も黒いので、イイダは好むでしょう」と言うのを聞いて、黒い衣服の姫が振り向いて睨んだ。この姫の目は常に遠方をさまようようであったが、ひとたび相手の顔に向かうと、言葉にも増して心を現した。いま睨んだ様子は、笑いを帯びながら叱ったと思われた。
食卓に就いてみると、五人の姫君がみな思い思いの粧(よそお)いをしている、その美しさは誰が一番であるとも言えないが、年長の一人が上着もスカートも黒いのを着ている様子が珍しいと見ると、これが先に白い馬に騎(の)っていた人であった。外(ほか)の姫君たちが日本人を珍しがって、伯爵夫人が私の軍服を褒める言葉の言葉尻について、「黒い地に黒い紐がついてるので、ブラウンシュワイヒの士官に似ている」と一人が言うと、桃色の顔をした末の姫が、「そうでもない」と、まだ幼くも卑しむ様子を隠さずに言うと、皆おかしさに堪えず姫の発言を笑ったので、赤らめた顔をスープの皿の上に低(た)れたが、黒い服の姫は睫(まつげ)さえも動かさなかった。しばらくして幼い姫が先ほどの無礼の罪を償おうと思ったのだろうか、「でも、あの方の軍服は上も下も黒いので、イイダは好むでしょう」と言うのを聞いて、黒い衣服の姫が振り向いて睨んだ。この姫の目は常に遠方をさまようようであったが、ひとたび相手の顔に向かうと、言葉にも増して心を現した。いま睨んだ様子は、笑いを帯びながら叱ったと思われた。
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