この塔は庭園に向いた方向に、窪んだ階を作ってその頂点を平らにしてあるので、階段を上り下りする人も、頂に立った人も下から明らかに見えるはずなので、イイダ姫が事も無く自ら案内しようと言ったのも、深く怪しむには足りない。姫はほとんど走るように塔の上がり口に行って、こちらを振り返って見るので、私も急いで追いつき、階段の石を先に立って踏み始めた。ひと足遅れて昇って来る姫の息が切迫して苦しそうなので、何度も休んで、ようやく上に到着して見ると、ここは思いの外に広く、周囲に鉄の欄干を作り、中央に大きな切り石をひとつ据えてある。
夢人注:「この塔は庭園に向いた方向に、窪んだ階を作ってその頂点を平らにしてある」とは、この塔がピラミッド状であることを考えると、ピラミッドの四方の側面のうちのひとつに、壁面を削る(窪ませる)形で階段を作ってある(「階(きざはし)」は「階段」と同じ。)ということだろう。つまり普通の円柱の塔のような螺旋階段ではなく、直線階段だと思われる。そして、その階段の途中も頂上も外部の目に明らかなので、男女ふたりで階段を上り頂点に立っても男女の仲を怪しまれることはない(「深く怪しむには足りない」)、ということかと思う。
夢人注:「この塔は庭園に向いた方向に、窪んだ階を作ってその頂点を平らにしてある」とは、この塔がピラミッド状であることを考えると、ピラミッドの四方の側面のうちのひとつに、壁面を削る(窪ませる)形で階段を作ってある(「階(きざはし)」は「階段」と同じ。)ということだろう。つまり普通の円柱の塔のような螺旋階段ではなく、直線階段だと思われる。そして、その階段の途中も頂上も外部の目に明らかなので、男女ふたりで階段を上り頂点に立っても男女の仲を怪しまれることはない(「深く怪しむには足りない」)、ということかと思う。
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