「十年ほど前のことだっただろうか、ここから遠くないブリョオゼンという村にあわれな孤児がいた。六つ七つの時に流行りの時疫に両親とも亡くして、兎口(欠唇)でたいそう醜かったので、面倒を見る者もなくほとんど飢え死にしそうになっていたが、ある日、古いパンでもあるかと、この城へ求めにやってきた。その頃イイダの君は十歳ばかりであったが、憐れに思って物を取らせ、玩具にしていた笛があったのを与えて、『これを吹いてみよ』と言うが、欠唇なので含めない。イイダの君は、『あの見苦しい口を治させよ』とむずかって止まない。母であった夫人が聞いて、幼いものが心優しくこう言うのだから、と医師に縫わせなさった」
「その時からその子供は城にとどまって羊飼いとなったが、賜った玩具の笛を離さず、後には自ら木を削って笛を作り、ひたすら吹き習ううちに、誰も教える者はいなかったが、自然にこのような音色を出すようになった」
「その時からその子供は城にとどまって羊飼いとなったが、賜った玩具の笛を離さず、後には自ら木を削って笛を作り、ひたすら吹き習ううちに、誰も教える者はいなかったが、自然にこのような音色を出すようになった」
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