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手紙配達者(文つかい)16

この日は朝の珈琲を部屋で飲み、昼ごろ大隊長とともにグリンマというところの銃猟仲間の会堂に行って、演習を見にきなさった国王の宴に参加するはずなので、正服を着て待つうちに、あるじの伯は馬車を貸して階段の上まで見送った。私は外国士官というので、将官や佐官をだけ集めた今日の宴会に招かれたのだが、メエルハイムは城に残った。田舎であるが会堂は思いの外に美しく、食卓の器は王宮から運んできたといって、純銀の皿やマイセン焼きの陶器などがあった。この国の焼き物は東洋のものを手本にしたというが、染め出した草花などの色は、我が国などのものに似てもいない。しかしドレスデンの宮殿には、陶器の間というものがあって、支那や日本の花甕の類がおおかた備わっているということだ。国王陛下には今初めて謁見する。すがた貌(かたち)優しい白髪の翁で、ダンテの「神曲」を訳しなさったというヨハン王の子孫だからだろうか、応接がとても巧みで、「我がザクセンに日本の公使を置くような際には、今の好(よしみ)で、あなたが来るのを待とう」などと懇(ねんご)ろにおっしゃりなさる。我が国では古い好(よしみ)がある人をといって、御使いを選ばれるような例はなく、そういう任務に当たるには、別に履歴がないと叶わないことをお知りなさらないのだろう。ここに集まった将校百三十余人の中で、騎兵の服を着た老将官の容貌、きわめて魁偉であるのは、国務大臣ファブリイス伯であった。



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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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