その十四 新しい仲間
そのアリーナという子は、ハンスの出したパンとハムをがつがつと食べました。
「飲み物!」
食べる手を休めず、ハンスに命令します。ハンスは皮袋の水を出しました。
水をごくごく飲むと、はあっとまんぞくそうなため息をついて、一つげっぷをしました。どうも、あまり上品ではありません。でもかわいいからいいや、とハンスは思いました。
「お前たち、どこへ行くんだ?」
食べ終わると、アリーナはピエールに聞きました。
「べつにあてはないんだが、中央グリセリードにでも行こうかと思ってる」
「いいな。おれもいっしょに連れて行ってくれ」
「かまわんが、先に、なんであいつらに追(お)われていたのか、話してくれ」
アリーナは、目を上にあげてなにか考えてましたが、やがて言いました。
「おれは、こう見えても実はこの国の女王の娘(むすめ)なんだ。ところが、悪いやつのせいでお母さんから離(はな)されて、西グリセリードでずっと育てられていたんだ。それで、女王に会いに行くためにそこをにげだしたんだ」
なんだか、作り話みたいです。こんなほこりに汚れた顔で、乞食(こじき)の子のように下品な態度(たいど)や話し方の王女がいるものでしょうか。
「うそつけ。どうせ盗みでもして追われてたんだろう。まあいい。生きていくためには、そういうこともある。連れて行ってやろう」
元泥棒のピエールは、この乞食娘もしくは泥棒娘に同情(どうじょう)したようです。
アリーナを加えて四人は出発しました。アリーナは同じ年ごろのハンスにさかんに話しかけますが、グリセリード語のできないハンスにはさっぱりわかりません。
「お前たち、この国の人間じゃないのか?」
アリーナに聞かれて、ピエールはこまってしまいました。
「いや、最近グリセリードに入ったアルカードの者なんだ」
「この女はグリセリード人だろう?」
「そうよ」
とヤクシーが答えます。パーリ人のヤクシーはグリセリードにはくわしいので、グリセリード人になりすますのは簡単です。パーリとはグリセリードの隣(となり)の国です。
「グリセリードのどこだ?」
アリーナは聞きたがりますが、ヤクシーはてきとうにごまかします。
馬と驢馬は合わせて三頭しかいないので、アリーナはヤクシーの馬の後ろに乗ります。体重が軽いので、馬もそれほどの負担(ふたん)ではありません。
「馬ってのは楽でいいや」
アリーナはごきげんです。
そのアリーナという子は、ハンスの出したパンとハムをがつがつと食べました。
「飲み物!」
食べる手を休めず、ハンスに命令します。ハンスは皮袋の水を出しました。
水をごくごく飲むと、はあっとまんぞくそうなため息をついて、一つげっぷをしました。どうも、あまり上品ではありません。でもかわいいからいいや、とハンスは思いました。
「お前たち、どこへ行くんだ?」
食べ終わると、アリーナはピエールに聞きました。
「べつにあてはないんだが、中央グリセリードにでも行こうかと思ってる」
「いいな。おれもいっしょに連れて行ってくれ」
「かまわんが、先に、なんであいつらに追(お)われていたのか、話してくれ」
アリーナは、目を上にあげてなにか考えてましたが、やがて言いました。
「おれは、こう見えても実はこの国の女王の娘(むすめ)なんだ。ところが、悪いやつのせいでお母さんから離(はな)されて、西グリセリードでずっと育てられていたんだ。それで、女王に会いに行くためにそこをにげだしたんだ」
なんだか、作り話みたいです。こんなほこりに汚れた顔で、乞食(こじき)の子のように下品な態度(たいど)や話し方の王女がいるものでしょうか。
「うそつけ。どうせ盗みでもして追われてたんだろう。まあいい。生きていくためには、そういうこともある。連れて行ってやろう」
元泥棒のピエールは、この乞食娘もしくは泥棒娘に同情(どうじょう)したようです。
アリーナを加えて四人は出発しました。アリーナは同じ年ごろのハンスにさかんに話しかけますが、グリセリード語のできないハンスにはさっぱりわかりません。
「お前たち、この国の人間じゃないのか?」
アリーナに聞かれて、ピエールはこまってしまいました。
「いや、最近グリセリードに入ったアルカードの者なんだ」
「この女はグリセリード人だろう?」
「そうよ」
とヤクシーが答えます。パーリ人のヤクシーはグリセリードにはくわしいので、グリセリード人になりすますのは簡単です。パーリとはグリセリードの隣(となり)の国です。
「グリセリードのどこだ?」
アリーナは聞きたがりますが、ヤクシーはてきとうにごまかします。
馬と驢馬は合わせて三頭しかいないので、アリーナはヤクシーの馬の後ろに乗ります。体重が軽いので、馬もそれほどの負担(ふたん)ではありません。
「馬ってのは楽でいいや」
アリーナはごきげんです。
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