その十五 シャングー
ハンスの連れている動物たちもアリーナはすっかり気に入ったようです。ときどき馬から下りてピントとかけっこをしたり、ジルバと木登りをしたり、とにかく元気な女の子です。動物たちも自分とあそんでくれるアリーナが大好きになったみたいです。
ところで、ハンスのお師匠のザラストは、世界には七人の大魔法使いがいると言っていました。そのうち五人は名前がわかっているが、あとの二人はわからない。五人のうち一人は自分だが、あとの四人は、アルカードのソクラトン、グリセリードのロンコン、グリセリードの南の森に住むブッダルタ、パーリのルメトトで、そしてレントよりもさらに西の未知の大陸ロータシアに一人いるらしいということです。その中の一人が、もしかしたら天国の鍵のありかをしっているかもしれないとザラストは言いました。自分で言うほどザラストが大魔法使いであるようには見えませんが、とにかくその四人をさがしてみようとハンスは考えていました。
「グリセリードにロンコンという魔法使いはいるか、アリーナに聞いてみて」
とハンスはヤクシーにたのみました。
「ロンコン? 知らないな」
とアリーナはきょうみなさそうに答えます。どうやら、人さがしは簡単にはいきません。
「だいたい、あんた、魔法なんて信じてるの? ばっかみたい」
アリーナの言葉にハンスはむっとして、魔法がある証拠(しょうこ)を見せようと思いましたが、人前で魔法を使うと危ないというザラストのいましめを思い出してがまんしました。でも、腹(はら)いせに、飛んでいた赤トンボをアリーナの顔に止まらせてきゃっと言わせてやりました。
なにしろグリセリードは広いので、村や町の間はだいぶはなれてます。街道がある分にはいいのですが、道のないところもたくさんあります。でも、大きな山はあまりなく、ほとんどは平野です。
西グリセリードの東側は、山に囲まれた盆地(ぼんち)です。それほど大きな山々ではありません。
「あそこは?」
丘の上から眼下に広がる土地と、その向こうの町を見てピエールがヤクシーに聞きました。
「たぶん、シャングーだと思うわ。もともと一つの国だったけど、グリセリードに支配されているの。パーリみたいなものよ」
「ここに入ると危ないかな」
「でも、ここを通らないと、ずいぶん回り道になるわよ」
二人の会話にじれて、アリーナが言います。
「何してんだよ。はやく行こうぜ」
そして、さっさと先にたって道をおりていきました。
ハンスの連れている動物たちもアリーナはすっかり気に入ったようです。ときどき馬から下りてピントとかけっこをしたり、ジルバと木登りをしたり、とにかく元気な女の子です。動物たちも自分とあそんでくれるアリーナが大好きになったみたいです。
ところで、ハンスのお師匠のザラストは、世界には七人の大魔法使いがいると言っていました。そのうち五人は名前がわかっているが、あとの二人はわからない。五人のうち一人は自分だが、あとの四人は、アルカードのソクラトン、グリセリードのロンコン、グリセリードの南の森に住むブッダルタ、パーリのルメトトで、そしてレントよりもさらに西の未知の大陸ロータシアに一人いるらしいということです。その中の一人が、もしかしたら天国の鍵のありかをしっているかもしれないとザラストは言いました。自分で言うほどザラストが大魔法使いであるようには見えませんが、とにかくその四人をさがしてみようとハンスは考えていました。
「グリセリードにロンコンという魔法使いはいるか、アリーナに聞いてみて」
とハンスはヤクシーにたのみました。
「ロンコン? 知らないな」
とアリーナはきょうみなさそうに答えます。どうやら、人さがしは簡単にはいきません。
「だいたい、あんた、魔法なんて信じてるの? ばっかみたい」
アリーナの言葉にハンスはむっとして、魔法がある証拠(しょうこ)を見せようと思いましたが、人前で魔法を使うと危ないというザラストのいましめを思い出してがまんしました。でも、腹(はら)いせに、飛んでいた赤トンボをアリーナの顔に止まらせてきゃっと言わせてやりました。
なにしろグリセリードは広いので、村や町の間はだいぶはなれてます。街道がある分にはいいのですが、道のないところもたくさんあります。でも、大きな山はあまりなく、ほとんどは平野です。
西グリセリードの東側は、山に囲まれた盆地(ぼんち)です。それほど大きな山々ではありません。
「あそこは?」
丘の上から眼下に広がる土地と、その向こうの町を見てピエールがヤクシーに聞きました。
「たぶん、シャングーだと思うわ。もともと一つの国だったけど、グリセリードに支配されているの。パーリみたいなものよ」
「ここに入ると危ないかな」
「でも、ここを通らないと、ずいぶん回り道になるわよ」
二人の会話にじれて、アリーナが言います。
「何してんだよ。はやく行こうぜ」
そして、さっさと先にたって道をおりていきました。
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