国立がん研究センター中央病院© 読売新聞
国立がん研究センターなどは28日、肺がん患者に、免疫治療薬「オプジーボ」と「ヤーボイ」を併用する臨床試験で、治療との関係が否定できない死亡が11人(7・4%)と想定を超えたため、試験を中止したと発表した。この2剤を使った治療は2020年から保険診療で受けられる。「治療を続けるかは、主治医とよく相談してほしい」と呼びかけている。
今回の試験は21年にスタート。全国59医療機関が共同で進めていた。進行・再発の非小細胞肺がん患者を対象に、この2剤と抗がん剤を使う併用療法と別の免疫治療薬の治療効果を比較する目的だった。
中止した理由について、今回の試験の代表を務める岡本勇・九州大教授は、「国内で行われる臨床試験での治療関連死の発生率は大体1~2%。今回の死亡率は非常に高い」としている。臨床試験の参加者には、単独使用ができないヤーボイを中止し、オプジーボを継続するよう勧めている。
また、この併用療法は、悪性黒色腫や腎がん、食道がんなどでも保険診療で使われているが、今回のような高い治療関連の死亡率は確認されていないという。
すでに使用中の肺がん患者に対しては「この治療で効果が出ている患者もいる」として、治療の継続について、主治医に相談するよう求めている。
NPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」の長谷川一男理事長は「この併用療法は、医療現場で広く使われており、肺がん患者にとって衝撃は大きい。医療者は、患者に丁寧に説明してほしい」と話している。
虎の門病院臨床腫瘍科の三浦裕司部長の話「薬の副作用は避けることができない。過度に不安になる必要はないが、今後、11人が亡くなった経緯を分析してリスクのある患者を特定し、将来に生かさなければならない」