第十九章 時空の彼方で
一万年の時が流れた。未来に向かって? それとも過去に向かって?
時空の闇の中、沈黙の夜の中をイフリータの体は旅し、そしてその体は耐久の限度を迎えていた。その時、イフリータは目覚めた。
彼女の前に一人の少年が立っていた。
驚いたように彼女を見つめているその顔は、彼女が一万年待ち続けた顔だった。
「真、真、やっと会えたね」
イフリータは少年に向かって歩いた。
「一万年、……一万年、この時を待っていた」
イフリータは少年の胸に顔を埋めて涙を流した。
「夢を……
夢を見たよ。
……
数え切れない夜の間で、
ただお前の夢だけを、
見ていたよ……」
少年は呆然としているだけであった。
「時間が無い。一万年の間に、私の体は消耗し尽くした。
私にはただ、お前をエル・ハザードに送る力が残されているだけだ。
後はお前に任せたよ」
イフリータは、真をエル・ハザードに送るために祈り始めた。
「ちょ、ちょっと。僕には何がなんだか」
少年は戸惑った顔で言った。
涙を流しながら、イフリータは真への最後の言葉を言った。
「あのなつかしい世界に行ったなら、私によろしく言っておくれ」
真の姿が光に包まれ、彼と、そこから数十メートルの範囲にいた人間のすべてがエル・ハザードに送られた。
イフリータはほとんどすべての力を使い尽くし、地面に崩れ落ちた。
やがて、やっとのことで立ち上がり、イフリータは歩き出した。
「ここは、……学校?」
校舎の中に入って、教室の中を眺める。真から貰った思い出の中で知っている風景。
校庭にでると、空には星が広がっていた。エル・ハザードの満天の星とは違って、ぼやけたようにまたたいている。
校庭のバックネットに凭れて、イフリータは目を閉じていた。心が空っぽになったみたいだ。
ふと、何かの気配を感じて、イフリータは目を上げた。
夜が明けようとしていた。薔薇色の朝空に、秋の雲が薄くかかっている。
力なく、イフリータは再び目を閉じた。
その時、もう一度、強い気配を感じて、イフリータは顔を上げた。
今度は本当だった。
グラウンドの向こうに空間のゆがみが生じ、そこに人の姿が現れていた。その姿は……。
真の姿だった。白い服を着てイフリータの杖を持ち、彼女に向かって、あの懐かしい微笑を浮かべている。イフリータを迎えにきたのだ。
イフリータは走り出した。その顔は生まれて初めての喜びに溢れ、尽きることの無い幸福の涙を流していた。
真は手を差し伸べて、イフリータを待っている。
二人の手が結ばれ、二人はしっかりと抱き合った。
「我が愛のエル・ハザード」 THE END
一万年の時が流れた。未来に向かって? それとも過去に向かって?
時空の闇の中、沈黙の夜の中をイフリータの体は旅し、そしてその体は耐久の限度を迎えていた。その時、イフリータは目覚めた。
彼女の前に一人の少年が立っていた。
驚いたように彼女を見つめているその顔は、彼女が一万年待ち続けた顔だった。
「真、真、やっと会えたね」
イフリータは少年に向かって歩いた。
「一万年、……一万年、この時を待っていた」
イフリータは少年の胸に顔を埋めて涙を流した。
「夢を……
夢を見たよ。
……
数え切れない夜の間で、
ただお前の夢だけを、
見ていたよ……」
少年は呆然としているだけであった。
「時間が無い。一万年の間に、私の体は消耗し尽くした。
私にはただ、お前をエル・ハザードに送る力が残されているだけだ。
後はお前に任せたよ」
イフリータは、真をエル・ハザードに送るために祈り始めた。
「ちょ、ちょっと。僕には何がなんだか」
少年は戸惑った顔で言った。
涙を流しながら、イフリータは真への最後の言葉を言った。
「あのなつかしい世界に行ったなら、私によろしく言っておくれ」
真の姿が光に包まれ、彼と、そこから数十メートルの範囲にいた人間のすべてがエル・ハザードに送られた。
イフリータはほとんどすべての力を使い尽くし、地面に崩れ落ちた。
やがて、やっとのことで立ち上がり、イフリータは歩き出した。
「ここは、……学校?」
校舎の中に入って、教室の中を眺める。真から貰った思い出の中で知っている風景。
校庭にでると、空には星が広がっていた。エル・ハザードの満天の星とは違って、ぼやけたようにまたたいている。
校庭のバックネットに凭れて、イフリータは目を閉じていた。心が空っぽになったみたいだ。
ふと、何かの気配を感じて、イフリータは目を上げた。
夜が明けようとしていた。薔薇色の朝空に、秋の雲が薄くかかっている。
力なく、イフリータは再び目を閉じた。
その時、もう一度、強い気配を感じて、イフリータは顔を上げた。
今度は本当だった。
グラウンドの向こうに空間のゆがみが生じ、そこに人の姿が現れていた。その姿は……。
真の姿だった。白い服を着てイフリータの杖を持ち、彼女に向かって、あの懐かしい微笑を浮かべている。イフリータを迎えにきたのだ。
イフリータは走り出した。その顔は生まれて初めての喜びに溢れ、尽きることの無い幸福の涙を流していた。
真は手を差し伸べて、イフリータを待っている。
二人の手が結ばれ、二人はしっかりと抱き合った。
「我が愛のエル・ハザード」 THE END
PR