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アリストテレスの政治原理

森鴎外の、「古い手帳から」(文章の題は鴎外ではなく、編集者によるものと思う)の中に、アリストテレスの政治哲学(政治原理)を実に簡明に説明している文章があり、長大な「政治」をわずか2ページに要約している。ただし、文語表現なので、それを私が要約した下の内容に誤読があるかもしれない。まあ、この日本図書センター刊、田中実編の「作家の随筆1 森鴎外」の中にも、「分疎(ぶんそ:いいわけ)」を「分琉(いいわけ)」と書くような誤記がある。「疏」を「琉」とするなど、鴎外ならするはずのない誤字である。私の誤読くらいは大目に見てもらおう。
・下の文章を全部書いた後で思うのだが、この文章は、大学で政治学を学ぶ若者や政治に関心がある高校生が最初に知るべき内容だと思う。つまり政治学の基本の基本だ。あえて言うが、鴎外の文語文を(アレンジはしたが)口語文にして現代人でも読めるようにしたのは、私の日本という国への最大の貢献だろう。まあ、無名ブログの記事など誰も読まない可能性もあるが、(既に亡くなった今だから、「死人に口無し」だから言うがww)「ネットゲリラ」氏など、私の記事を読んでいたのではないかと私は思っているのである。夜郎自大と言わば言え。



1:プラトンは人生の幸福を自己の利害を顧みず国家に尽くすことに求めた。これに対してアリストテレスは人生の幸福を、自分が所有するものがあって初めて成立するものと見た。彼(プラトン)は純利他である。此(アリストテレス)は自利があった上での利他である。ここにプラトンの国家集産主義(注:国家中心主義と解しておく)に対するアリストテレスの個人主義がある。
2:プラトンの国家は上二階級(注:政治家と軍人)にまったく自利のこころを捨てさせようとしたものである。このような器械的(注:人工的な、不自然な)国家は成り立たない。なぜなら、自利のこころが無いと人の心に励みがない。緊張がない。発展がない。文化が滅びる。
国家は私産を認め、結婚を認めて、この励み、この緊張を助成しなくてはならない。ここに(プラトンの)共産主義が否定される。(注:プラトンは、政治家と軍人という、国家を導く上二階級の者は財産と女子を私蓄することを禁じている。つまり、上二階級だけは共産主義としたのである。その他の階級、農工商と奴隷が「人民」である。資本家も奴隷も賤業者なのである。) 
3:私産を認め、結婚を認めると、貧富幸不幸が生じる。国家の制度はこの懸隔が大きくならないように調節していくべきである。ここにアリストテレスの社会政策がある。
4:プラトンの理想国は上二階級がみな君子でなければ成り立たない。アリストテレスの国家は凡俗の団体である。しかし、凡俗を小人から遠ざかり君子に近づくようにさせねばならない。その動機が、人間が天賦的に持つ「仁」である。これは「自利を有した上での利他」であり、平等であるから生じるというものではなく、相異なる人と人の間にも成り立つ社会的感情である。そして自利の心はこの「仁」の感情によって調節され、この調節を制度の目的として国家が成り立つ。(注:国家の目的は、つまり「仁」を実現することにある、と言える。)
5:仁は個人の存続(自利)を抑え、人類の存続(利他)を揚げようとする自然の手段である。
6:国家は凡俗の国家であるから、凡俗を国家の政治に参加させねばならない。(注:つまり、民主主義国家になるのが本来あるべき姿である。)この時、君子に近い凡俗は政治のために有利で、小人(下種)に近い凡俗は政治のために不利である。この両者が存在するのはやむをえない。
7:国家は少数の君子(注:ここでは貴族的存在のこと。富裕者も含むだろう)に特権を与えず、政治をほしいままにさせることなく、また同時に、大多数の小人(注:ここでは社会の多数者、つまり民衆のこと)に横暴なふるまいをさせないように努めねばならない。(注:まさに、これこそが現代の政治の二つの災いである。かつては前者が横暴を揮い、今は後者が無軌道に振る舞っている。しかし、同時にそのどちらも大富豪がマスコミと賄賂で操っている。)
8:アリストテレスは、政治上の公平と経済上の公平を並行させようとした。国家は多数の者に適度な富を所有させねばならない。と同時に、国家は個人の需要を超過する蓄財を抑制し、黄金を人生の最重要物とするような射利(利益追及行為)を禁圧すべきである。(注:これこそが、まさに私の言う「資本主義と社会主義の結婚」である。)




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酔生夢人
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自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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