西洋音楽の上に日本語を載せる難しさ、というのが明確に語られている。そこで開き直って、「たかが歌詞じゃねえか、こんなもん」と、滅茶苦茶な日本語を曲に載せたのがサザンオールスターズなので、私は「日本語破壊者」として、あのタラコ唇(名前は失念)が嫌いなのである。曲作りの上手さは別の話。そして、異質な言葉と言葉のぶつかり合いが時として「詩」になることもあることは承知しているが、サザン以降の、その模倣者たち(馬鹿たち)による、愚劣な歌詞の氾濫、日本の歌謡における歌詞の価値低下の原因はサザンにあると思っている。そして、西洋音楽の上に日本語を載せることは難しいが可能(たとえば、「上を向いて歩こう」が欧米で高く評価されたのは、その達成度が高かったからだろう。)なのであり、その努力を厭うのは、単なるeasy goingにすぎない。まあ、ロックに日本語を載せるのの難易度の高さは、ポップスの場合とは別だ、ということは承知の上の話だ。
(以下引用)
坂本龍一が生前に語った、「日本では珍しく言葉とメロディーが一体化している」アーティストは
忌野清志郎の歌と詞の特徴
番組ではクリスの選曲で忌野清志郎さんと坂本さんが1982年にリリースしたコラボレーション曲『い・け・な・いルージュマジック』をオンエア。 坂本さんのゲスト回の放送数日前に忌野さんが亡くなられたということで、坂本さんがこの曲を聴きながら忌野さんとの思い出を語った。 クリス:教授は清志郎さんと仲がよかったんですよね。 坂本:そうですね。本当に短い時期だったんですけど、すごく仲良かったですね。もちろん僕自身はそれ以前から彼の音楽はずっと知ってますし、去年(2008年)も実はメールを交換したりして、「病は気からだ、ベイビー」っていうメールをもらったりしてたんですよ。一時回復されたんで、2カ月前に日本に来たときも「お見舞いに行こうかな」と思ってて事務所の方に訊いたら、「元気にレコーディングしてる」と。だから「元気なんだ、よかった」と思って行かなかったんですね。そうしたら突然の訃報なので、ショックです。 クリス:本当にロックというか、骨のある人で恐れ知らずで、でもすごく謙虚でいつもニコニコされている非常に朗らかな方ですよね。 坂本:静かな人ですね。 坂本さんは「清志郎は、日本では珍しく言葉とメロディーが一体化している、数少ない歌手というか作詞家」と表現する。 クリス:日本語ってポップスを歌うのが難しいなって思うときがあります。 坂本:ポコ、ポコ、ポコっていうオタマジャクシのなかに日本語の「わ・た・し・は」みたいな音を1個ずつ当てはめていくような作り方にどうしてもなっちゃうんです、日本語の特性上。ところが英語だとボブ・ディランとか詞の抑揚がそのままメロディーになるでしょ。基本的には全部そうじゃないですか。日本語の場合、それが分かれちゃってるんですよね。メロディーはメロディーで五線紙上に作っていくっていう作り方が多いんですよね。でも彼はそうじゃないんですよ。 クリス:なるほど。その国の言葉ってありますからね。たとえばイタリア語のカンツォーネは言葉ありきでメロディーが出てくるし。フランス語っていう媒体があるからそういう譜割りになるし。 坂本:譜割りと抑揚が全部一緒になってる。ところが日本語はロックとかそういう音楽が輸入されたものだから。欧米の言葉によって発明された音楽が輸入されて、その上に無理やり言葉をのせてるから難しいんですよ。日本語の自然の姿は浄瑠璃とかなんですよ。でも清志郎くんは苦労してるわけでもなく、自然にそれができてるんですよ。 クリス:惜しい方を亡くしましたね。早すぎましたね。 坂本:僕は、彼は人生を全うしたと思ってます。もちろん長生きすればそれだけやれることがあるでしょうけど、彼はきちんと自分の生を全うしたと思っています。生を全うするっていうのは人生の長さじゃないですからね。正直に生きて。もしかしたら手術をすればもっと長生きできたかもしれないけど、自分の選んだ生ですからね。
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