大阪地検と大阪府警は12日、窃盗事件で逮捕した少女(17)について、誤って20代の成人女性として起訴したことを明らかにした。少女は実在するこの日本人女性のマイナンバーカードを所持していたことから、検察や警察は他人へのなりすましを見抜けなかった。この日は初公判で、大阪地裁は刑事裁判を打ち切る公訴棄却の判決を言い渡した。地検は少女を大阪家裁に送致した。
地検や府警などによると、少女は2月下旬、大阪市中央区のバーで現金入りの財布を盗んだとして緊急逮捕された。捜査員に女性名義のマイナンバーカードを示し、正確な生年月日も説明した。女性からはカードの盗難届が提出されていたが、府警は少女の供述と身分証の内容が一致することから、十分な人定捜査を実施しなかった。
検察は3月、窃盗事件を巡る府警の捜査結果を踏まえ、この少女を20代女性として起訴。弁護人は起訴後に少女から紹介された知人とのやり取りで身元について不審に感じたため、本人に確認したところ、少女は自身の名前や年齢とともに実際はタイ国籍だと告白。弁護人は担当検事に身元に関する補充捜査を要請した。検察もこの間、詳細な身元確認を怠っていたとみられる。
弁護人は取材に「少女は日本語を非常に流ちょうに話し、私も日本人だと思っていた。マイナンバーカードの入手先は分からないが、捜査当局は入念に身元確認をする必要があったのではないか」と語った。カードには女性の顔写真もあったが、少女は「顔が似ていた」と話していたという。
地検の佐竹毅刑事部長は「再発防止に努める」と話し、府警の津川浩徳刑事総務課長は「身分証をうのみにした。緻密な捜査を尽くすべきだった」と語った。府警はなりすまされた女性に謝罪したことも明らかにした。【古川幸奈、三上健太郎、安元久美子】