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日本近代の対外戦争への空想

気まぐれに市民図書館から借りてきた佐藤晃著「大東亜戦争『敗因』の検証」という本が案外面白くて、八割がた読んだが、これを読むと、大東亜戦争の敗因は、これまでの「陸軍悪玉論」に反し、主に海軍の我がままな行動にあったことが分かる。つまり、統帥権が事実上陸軍と海軍に分裂し、それぞれ独自に行動しながら、海軍の主張に押し切られることが多く、そのために戦域が(最初の構想であったアジア大陸東部を主戦場とするものから)太平洋中央部に無謀に拡大したのが主敗因だ、という主張だが、この主張を裏付けるのが、ミッドウェー以降の海軍の連戦連敗であり、実は「真珠湾奇襲」以外のほとんどの戦いで海軍は負けており、その「戦果」は嘘だらけだったということだ。しかも、ガダルカナルなどの戦いでも海軍は兵站の役目をほとんど放棄しており、陸軍の責任とされている膨大な兵士の餓死の原因も海軍にあるとも言える。(ガ島攻略作戦自体が、海軍主導だったらしいが、途中で責任放棄したわけだ。)要するに、戦後の記録や証言などのほとんどは「上級軍人の中で生き残った連中」が手に握り、主張しているから、「陸軍悪玉論」は頭から信じるべきではない、ということである。

それに関連して考えたのが、日本の軍隊上層部のとんでもない無能さで、まあ、これは今さら言うまでもない常識なのだが、この無能さは、実は江戸幕府末期から(明治維新にも関わらず)続いているのではないか。要するに、戦国時代の優れた武将たちが江戸幕府上層部にいたら、明治維新も起こらず、欧米への属国化も起こらなかったのではないか。欧米の開国要求は突っぱねて、日本独自の近代化を成し遂げたあと、対等な条件の下で和平条約を結んだだろう。
そこで、私が考える内閣だが、(現代の役職名で言うと)


総理大臣 織田信長
副総理大臣 豊臣秀吉
大蔵大臣 徳川家康
防衛大臣 武田信玄
外務大臣 勝海舟(戦国武将ではないが、この役職には最高の人材だろう)

などで、防衛大臣には真田幸村でもいい。上杉謙信だと、やたらに戦争ばかりしたがりそうであるwww




私が一番不満なのは、黒船による脅迫に江戸幕府が簡単に屈服したことで、あんな船など、100艘くらいの小舟に決死隊の武士や忍者を載せて黒船を襲わせれば簡単に占領できたとしか思えないのである。で、次の黒船が来たらまた同じようにする。大砲があろうが、船内への侵入には無力である。米国がいくら黒船を寄こそうが、長距離派兵の兵站の問題があるから、何度でも撃退すればいいのである。英国などの脅迫も同じことだ。黒船を破壊せずに占領できれば、それだけで日本の所有物になる。


(追記)勝海舟の見識の高さや判断力の明晰さは、自慢話半分とはいえ、「氷川清話」ではっきり分かる。勝海舟の言うように、清国との融和政策を採っていたら、その後の不幸なアジア史は別の展開を見せただろう。なお、注意しておくが、上の方に書いた「大東亜戦争『敗因』の検証」は、思想そのものはかなり右翼的なもので、戦史以外の発言はあまり感心しない。戦史の分析は、専門家(軍人、学者、御用評論家)の「ポジショントーク」とはまったく異なる、「思ったとおりに正直に発言している」刺激的で啓発的なものだ。こういう書物は読む側に「是々非々」の態度が要る。若いと、そういう読み方は難しい。


勝海舟は日清戦争について「犬も食わない兄弟喧嘩」として反対だった。それより日本が出資して鉄道を敷いたり交易に力を入れるに限ると。いかに勝が先進的で理性的な人物だったか分かるが、朝鮮併合についてはなんと言ってたのかな。と思ったら併合した頃には死んでいたのね。




(追記2)これもタイムリーなので追記しておく。



さんがリツイート

人間の記憶は(悪意なく)改ざんされる、と知ったのは、旧日本海軍関係者のインタビュー記事を時系列に並べて整理した時だな。同じ人が、何回もインタビューを受けるうちにどんどん戦果が増えていくの。きっと自分のなかで記憶が変化していったんだなと思った。証言を一次史料にする危険性を知ったわ。















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