とはいえ、この結果から「転職する気はない」も46.5%いることが判明。この差は何にあるのだろう。もしかしたら、何かが解消されたら、今の会社にとどまりたいと思うのかも? 「いずれ転職したい」と回答した107人に「上司から提案されたら、転職を思いとどまる条件」について聞いた。
■転職を思いとどまる条件TOP10
(10項目から1、2位を選んでもらい、1位を2pt、2位を1ptとして集計。協力/アイリサーチ)
1位 給与額が現在の1.5倍になる 139pt
2位 希望する部署に異動できる 30pt
3位 残業時間がゼロになる 27pt
4位 嫌な部下や同僚を他部署に異動してもらえる 26pt
4位 確実に将来、会社の主要役職に就ける 26pt
6位 裁量労働制で、自由に勤務時間を選べる 18pt
7位 社内で新規事業を立ち上げられる 13pt
8位 希望する勤務地を選べる(在宅勤務含む) 12pt
9位 希望する学校に留学をさせてもらえる 7pt
9位 売上などのノルマがなくなる 7pt
……と言うことで、転職を思いとどまる条件としては「給与増」がダントツの1位になりました。まぁ、もらえる対価が高額なら汚れ仕事にだって人は集まっているわけです。逆に、その仕事への熱意を持った人は多くとも薄給で知られる業界は人手不足に喘いでいます。好条件の仕事には求人の何十倍、何百倍もの応募者が殺到する一方で、低賃金の非正規でしか募集をかけない企業は「人が集まらない」と嘆いてばかりです。要するに、最大公約数的な処方箋は「給与」なのでしょうね。
身体にとって栄養のある食事や休養が万能薬であるのなら、金もまた社会にとっての万能薬と呼ぶことができます。個別の症例の特効薬には必ずしもならないとしても、全般的な底上げにはつながる、そういうものです。もし会社が本気で従業員の離職に悩んでいるのなら、最も幅広く効果があるのは「賃上げ」なのですね。実際、ヘンリー・フォードを筆頭に従業員の賃上げで離職者を減らすことに成功し、会社の収益力を増すことに成功した経営者も少なからずいます。個別に調べていけば個人的な問題も多々あることでしょうけれど、給与水準を引き上げさえすれば、だいたいは片付きそうです。
そうは言っても、人件費を抑制することで会社の利益を確保するのが21世紀の日本的経営ですし、あろう事か労組の中には安倍政権の賃上げ要請に反発して要求を控えるようなところもある始末です。最も効果的であるとわかっていてもなお、賃上げという最良の解決策からは目を背けてしまうものなのでしょう。あるいは、企業は従業員の語る「建前」を真実と勘違いしているフシもありそうです。働くのは金のため――そう公然と語ることは、日本の求職者に許されていません。就職したければ、金のためではなく、何らかの「やりがい」なり自己実現なり社会貢献なり、美辞麗句を並べることが求められます。そこで語られる絵空事を真に受け、社員が働いているのは金のためではない、賃上げは解決にならないと、そう錯覚しているのが日本の経営者なのかもしれません。
介護人材の不足は結構な以前から叫ばれていますけれど、その薄給は昔から変わっていません。そこで改革派の政治家や財界人は移民の受け入れを検討せよと語るものですが、まぁ金を出さずに済ませようとするのが日本的なソリューションなのでしょう。そして昨今は保育士の不足が問題視されています。保育士の資格保持者は十分な頭数がいるはずなのですが、にもかかわらず保育士として働く人が絶対的に足りていないわけです。そこで幼稚園や小学校の教員を保育士の代わりに働けるようにしようなんて規制緩和が検討されていたりもするようですけれど、これが解決に見える人の頭の中身を見てみたいです。保育士の給与水準もまた非常に低いことが知られています。なぜ有資格者なのに保育士の職から離れていく人が多いのか、何を改めれば人を確保できるのか、それは十分に明らかなことのはずです。
要は、経営者は現場の人間のことを考えずに、人件費を減らすことしか考えていないのでしょう。
私は、低賃金で人を働かせている経営者に、「仕事を選ぶな」という資格はないと思います。
次は国民(若者)の義務にするかか奨学金の給付条件にするか
そういう先進国じゃあり得ない話が
ありうるのが日本ですね