我々一般人の大多数は、「政治家は政治の専門家で、政治に関することは(少なくとも各党党首レベルの政治家なら)何でも知っているはずだ」と考えていると思うが、実はそれは錯覚で、政治家ほど政治の実情を知らないのではないか。
鳩山元首相のように正直に自分の無知を認める人は稀な存在で、だからこそ私は彼が好きなのだが、これは良くも悪しくも彼が「いい家のお坊ちゃん」だったから、こういう人柄でも政治家としてやっていけたのだろう。貧しい出の野心家の政治家のように「政治で稼ぐ」必要性が無いから自分の理想を追うことができるわけだ。
だが、一国の総理としては、「日米関係の実態」についてあまりに無知すぎたのが、例の普天間基地移設問題での迷走となり、ひいては自らの退陣につながってしまった。
福田総理の突発的な辞任も、米国からの無理な要求に対してノーとは言えず、イエスと言えば売国者になるから、そのジレンマから抜け出すための苦肉の策だったという説もある。
安倍総理の一期目の「お腹が痛いので辞任する」も、実は福田元総理と同じで、後で考え直して売国奴になる決意をして、その結果米国からの総理任命を受けたのではないか。
大洪水の後、乾いた大地があるかどうか調べるためにノアは鳩を放ったが、数回の失敗の後、一羽の鳩がオリーブの小枝を咥えて戻ってきた。それでノアは大洪水が終わったことを知った。
鳩山氏は、その無垢さで、日本の政治がどういうものか鏡のように映している。
(以下引用)
http://t.co/0KqMQjOzAg
「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」で話題の矢部宏治が鳩山友紀夫と“日本の真の支配者”を語った!【後編】
[2014年12月16日]
鳩山友紀夫元首相(右)と矢部宏治氏が、日本が「真の独立国」として新しい戦後を歩むための方法を議論!
民主党・鳩山政権の崩壊と沖縄の基地問題を出発点に、日本の戦後史を振り返った話題の新刊『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル)の著者・矢部宏治氏。そして、まさにこの本執筆のきっかけとなった鳩山友紀夫元首相。
このふたりが、辺野古移設反対派の圧勝に終わった11月の沖縄県知事選や総選挙を踏まえ、事実上、今も米軍の占領状態が続いているこの国の姿と、日本が「真の独立国」として新しい戦後を歩んでいくためにはどうすればいいのか、その方法を考えた、後編! (前編 ⇒ http://wpb.shueisha.co.jp/2014/12/15/40591/)
■日本全土が「米軍の基地」という現実
矢部 「横田空域」という、1都8県の上に米軍が管理している広大な空域がありまして、日本の飛行機はここを飛べない。これなんか典型的な「米軍が自由に日本の国土を使える」事例ですね。
鳩山 私も横田空域のせいで、日本の航空会社が非常に不自然な飛行ルートで飛ばされていることは知っていましたが、「沖縄と同じように、米軍の優位性というのが東京や関東周辺にもあるんだな」という程度にしか理解していなかった。
しかし、具体的に図を見ると、関東上空がこれほど広範囲に米軍に「占領」されているという事実に仰天しますよね。沖縄だけではなくて、実は日本全体がアメリカに今でも支配されているも同然ですから。
矢部 飛行ルートの阻害もありますが、それより問題なのは、米軍やCIAの関係者が日本の国境に関係なく、この空域から自由に出入りできる、入国の「裏口(バックドア)」が存在することです。これはどう考えてもおかしな話で、こんなことは普通の主権国家ではあり得ません。
この問題なんて国際社会にアピールしたら、みんなすごく驚くと思うんです。これは今、日本で起きているほかの問題、特に原発の問題にも絡んでくる話ですが、日本という国が置かれている状況の歪(ゆが)みやおかしさを伝えるいい事例になると思っています。
結局、日米安保条約とは、米軍が「日本の基地」を使う権利ではなく、「日本全土」を基地として使う権利を定めたものなのです。
旧安保条約の第1条で米軍にその権利が認められ、60年の安保条約で文言は変わっていますが、その権利は残されている。これを「全土基地方式」というのですが、これはなんとしても国際社会にアピールして変えていかないといけない。
鳩山 矢部さんの本だと、米軍がそんなことをできる根拠は、敗戦国である日本を今でも「敵国」と見なした、国連憲章の「敵国条項」があるから、という話でしたが。
矢部 そこの説明は少し複雑で、旧安保条約第1条には、そうしたメチャクチャな軍事利用のあり方は、日本側が望み、アメリカ側がそれに応えたものだということが書かれている。そうした戦後処理を日本が望んだ以上、日本の主権や国民の人権がいくら侵害されていても、国連は口を出せないというロジックになっているんです。一種の法的トリックと言ってもいい。
ですから、日本にちゃんとした政権が誕生して、国際社会で堂々と議論し、「全土基地方式はやめてくれ」と言ったら「それは敵国条項があるから無理だ」とは絶対ならないと思います。
■米軍の占領状況を米国民に訴えろ!
鳩山 矢部さんのような方の努力もあって、私もようやく目隠しが外れて真実が見えてきたわけですが、問題はそこから先をどうするかです。やはり一部の人たちだけが目隠しを外すんじゃなくて、日本の国民の多くに触れられるPR戦術というか、日本の戦後の背後には何があるのかをきちんと解き明かす手段が必要だと思いますね。
それと、日米関係に関わっている米軍関係者を除けば、アメリカの議会や国民は日米合同委員会なるものがどういう役割を果たしてきたのか、それが今も日本の主権をさまざまな形で侵害している事実も知らないと思います。しかし、こうした状況はアメリカの国民から見ても「異常なこと」だと映るはずですから、われわれが海外、特にアメリカの議会や国民に対して「日本は今も事実上、米軍に占領されているけれど、本当にこれでいいのか?」と訴えることが重要です。
矢部 情報発信という意味では、今、ドイツなど多くの国が日本の原発汚染に対して「何を考えてるんだ!」って相当に怒っている。基地の問題だけだと「勝手にやっててくれ」となるかもしれないけれど、原発の問題はそうはいかない。全地球的な問題です。
あれだけ深刻な原発事故を起こした日本がなぜ、今再び原発推進への道を進もうとしているのか? その背景には「日米原子力協定」という、自国のエネルギー政策すらアメリカの同意なしには決められないという、客観的に見ても非常に歪(いびつ)な構造がある。それをうまく国際社会にアピールできたら、こうした日本の歪んだシステムに世界の光が当たる可能性はあります。
鳩山 そうですね、日本のメディアも完全に取り込まれてしまっているのであれば、基地の問題だけではなく、原発も併せて海外に訴えるほうが圧倒的に意義があると思います。
ただし、そうした「外圧」に頼るだけでなく、結局はこの国の政治を変えない限り、そして多数派にならない限り、こうした流れは大きく変えられません。
(取材・文/川喜田 研 撮影/池之平昌信)
●鳩山友紀夫(はとやま・ゆきお)
1947年生まれ、東京都出身。第93代内閣総理大臣となり、沖縄基地問題で「最低でも県外移設」と主張し活動するも、2010年6月、総理辞任。2012年の総選挙前に政界を引退。昨年から政治信念である「友愛」の文字を取り「友紀夫」名で活動している
●矢部宏治(やべ・こうじ)
1960年生まれ、兵庫県出身。書籍情報社代表。著書に『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知ってること―沖縄・米軍基地観光ガイド』、共著に『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』など。『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』は発売1ヵ月で5万部というベストセラーに