ちなみに、このニーチェの有名な箴言の前文は「怪物と戦う者は、みずからも怪物とならぬようにこころせよ」である。(ニーチェ「善悪の彼岸」箴言146:竹山道夫訳)
(以下引用)
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タッカー・カールソンという "アメリカの保守派政治コメンテーター" なる人物が、ロシアのプーチン大統領に直接取材(インタビュー)を行ったことは、SNSに接している人であるならばご存知のことかと思う。もちろん、アメリカに飼いならされた日本のマスメディアは取り上げないか、悪意からの偏向報道をするかのどちらかになる。
しかし、私にとっては大変に楽しいインタビューだった。お互いに全く嘘がないとはいえないだろうが、アメリカや日本政府のプロパガンダとはレベルがかけ離れている。基本が正直で、公にできない情報のみが隠されるか、オブラートで包まれるかになる。
しかし、日本政府やアメリカのプロパガンダは基本が子供騙しの嘘になる。真実が語られるとすれば都合のいいことだけになる。マスメディアも、そんなプロパガンダに輪をかけて報道する。真実などどうでもよくて、ひたすらその情報が日本政府に有利か、アメリカに有利かということだけを判断の基準とする。昔の大本営発表の上を行っているのが、今の日本のマスメディアになる。
さて、タッカー・カールソンのプーチン大統領へのインタビューを見ていて感じたことは、「ロシア人はアメリカ・インディアン扱いされている」ということだった。このことを理解するには、アメリカに移住してきた白人たちが、アメリカ・インディアンをどのように扱ったかを知る必要がある。
それほど難しいことではなく、アメリカ合衆国という国家はインディアンを征服することによって建国されたという事実を認識すればいい。コロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年以降、ヨーロッパの白人はアメリカインディアンからの強奪と虐殺を繰り返した。その結果、1890年にアメリカインディアンは完全に征服された。
この間、白人がいかに汚い手口を使ったかについては、ネットを検索すれば得られる情報になる。私が漠然と認識しているところでは、白人たちは最初友好的なフリをして近づく。そして、相手が油断したところをみはからって、盗みや強奪を行う。これが一番原始的なアメリカ白人の手口になる。
しかし、そんなことはいつまでも続かない。インディアンが警戒し始めるからだ。そこでアメリカ白人は、インディアンと約束(契約)を交わす。土地を借り受けるとか、交易をするなどのことによって交流を図る。何のためにそんなことをするかといえば、それはインディアンを油断させるためだ。
いかにもルールに基づいて紳士的な交流が行われるかのように見せかけながら、アメリカ白人はインディアン虐殺の準備を整える。そして、準備が整ったところで突然襲いかかり、インディアンを皆殺しにしてしまう。要するに今でいえばジェノサイドを行う。
その際、それまでのルールをアメリカ白人の都合のいいように勝手に変えてインディアンを怒らせ、インディアンの方から攻め込ませるという手の込んだことも行った。アメリカ白人が自分たちは防衛のために正義の戦いをしているとアピールするためだ。あるいは、インディアンの一つの部族を篭絡して、他の部族と戦わせるなどのこともしている。それは現在もアメリカの得意技の一つだ。
アメリカ白人は最初から「インディアン皆殺し、財産は全てを奪う」と決めて近づいているが、インディアンの方は白人皆殺しなどとは思っていない。それだけでも戦いは不利になる。そして、1890年にインディアンが完全に征服されるまで、卑怯なだましと強奪とジェノサイドをアメリカ白人は繰り返した。
以後、今の今に至るまで、アメリカにはこの建国の精神、つまり「だましと略奪と虐殺」の精神が脈々と続いている。アメリカ人は今でも「だましと略奪と虐殺」が大好きでたまらない。中東でも、アフリカでも、南米でも、アジアでも、それを何度も何度も繰り返してきた。アメリカは血塗られた国といえる。
そして、1991年にソ連が崩壊して以降、アメリカはロシア征服に乗り出した。やはりアメリカの西部開拓、つまりインディアン征服と同じ手口を用いた。まずは、ロシアに対して「NATOを1インチたりとも東方に拡大しない」と約束することから始まった。
しかし、その約束はどうなっただろうか。ベラルーシとウクライナ以外のいわゆる東欧と呼ばれる地域が徐々にNATOに組み込まれてしまった。明らかな約束違反だ。インディアンを征服する手口と同じになる。そして、アメリカ白人は残されたウクライナも標的にした。
ウクライナはロシアの隣国であり、ここをNATO加盟国にされて核ミサイルなどを配備されてはロシアもたまったものではない。ゆえに抵抗する。これが現在行われているロシア・ウクライナ紛争の本質になる。過去のアメリカが西部開拓という名のインディアン征服を行ったように、現在のアメリカはロシア開拓に乗り出して、ロシア人を征服しようとしている。それにロシアが反発している。
ウクライナに介入を始めたときのアメリカ白人は興奮状態だっただろう。活気でみなぎっていただろう。なにしろ、アメリカの西部開拓が場所を変えてまた始まろうとしていたのだから。いくらでもだまし放題、盗み放題、殺し放題なのだから。アメリカ白人の原始人としての血が騒ぐというものだ。
面白いことに、ロシアに領土拡張の野望がないことも、アメリカ・インディアンと同じになる。今回のインタビューでもプーチンは、ロシアがアメリカからの侵略に対応しているだけであることを、歴史をひも解くなどして説明しようとした。ロシア人はアメリカ・インディアンが先住民としてアメリカで自然に暮らしていたのと同じであると私には聞こえた。ポーランドなどへの侵略の意思がないことも明言した。
しかし、アメリカは違う。アメリカの野望は他国の征服だからだ。アメリカを侵略したのはイギリスになるが、そのイギリスも侵略によって出来上がった国といえる。つまり、アメリカは侵略の歴史しか持たない。アメリカ建国の精神は侵略・征服になる。
日本人はほとんど気がついていないようだが、1853年の黒船来航から現在に至るまでの約170年間、日本も英米の侵略にさらされてきた。日清戦争や日露戦争は、英米の代理戦争をさせられたものだ。今のウクライナと同じように。日本の始めた戦争ではなく、また、日本が勝ったのでもない。
大東亜戦争の敗戦以降は、日本は明確にアメリカの植民地になった。ただし、アメリカは巧妙に日本は独立していると嘘を教え、多くの日本人がその嘘を現在も信じている。なぜ日本は30年間も経済発展をしないのか、国民の所得が増えないのかを考えるだけでも、アメリカの嘘には気づけるはずだ。
加えて、なぜ日本にはアメリカの軍事基地があるのだろうか。専用施設が80か所近く、共同使用施設を含むと約130か所が存在している。何のためだろうか。日本を守るため? ご冗談でしょう。日本を支配するため、そして、中国やロシアを威嚇牽制し、いざというときには前線基地として使うためだ。おめでたい日本人は、従順に従うばかりで疑問を持とうとしない。
日本はほぼアメリカに征服されたといってもいいけれども、昨今のアメリカの様子を見ていると、この先一層支配を強めようとしているように見える。何かと理由をつけては日本から金を巻き上げる。日本が植民地だと思っているアメリカにとっては当然のことではあるけれど。思いやり予算もそう、ウクライナ支援もそう、防衛費倍増もそう、郵政民営化もそう、ワクチン接種もそう。全部アメリカの懐に大金が入っていく。与野党含めて日本には反対する者が皆無に近い。
今の世界ではこれ以上ない悪党がアメリカになるけれども、インタビューでプーチンは、バイデンは敵ではなく、アメリカはずっと同じ力で支配されており、対峙しているのは彼らだと述べている。「それこそがディープステートだ」と好きな人は言い始めるのだろうが私はそうは思わない。
敵はアメリカ建国の精神になる。インディアンをだまし、インディアンから略奪し、インディアンに対してジェノサイドを行ったアメリカ建国の精神。それを今でも世界に対して実行しようとするアメリカンスピリット。アメリカ人一人一人の心の中に根付いている侵略者精神。それこそがディープステートになると私は思う。それを退治しないことには世界に平和は訪れない。
アメリカにとってみれば、ロシア領土はかつてインディアンが暮らしていたアメリカ大陸と同じに見えるのだろう。アメリカにとってみれば、中国領土もかつてインディアンが暮らしていたアメリカ大陸と同じに見えるのだろう。それゆえアメリカのすることは一つしかない。「だましと略奪と虐殺」になる。ロシア相手でも、中国相手でも。
プーチンはインタビューの最後にこんなことを述べている。「実話になるが、戦場でウクライナ兵がロシア兵に囲まれて降伏することを勧められた。しかし、ウクライナ兵は完璧なロシア語で "ロシア人は降伏するな" と叫び、全員が死んだ。」
これは二つのことを意味しているように思う。敵として戦うウクライナ兵であっても、内面にはロシア人としてのアイデンティティを持っていること。つまりウクライナ人はロシア人であり、ウクライナはロシアであるということ。
もう一つは、アメリカがウクライナやロシアを侵そうとしても、ロシア人は死ぬまで徹底抗戦をするということ。金さえ儲かれば平気で魂を売るような軽薄なアメリカ人と、ロシア人とでは人格が違うということ。
そろそろアメリカ人も自分たちの誤りに気がついていいように思う。正義のない戦いはいずれ必ず敗北する。ロシア人をアメリカ・インディアンと同一視して、頭皮剥ぎをするような真似を続けるべきではない。私としては人道的な観点から、そう、ヒューマニズムの観点から、ロシア、そしてプーチンを応援したい。