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私の耳を脅かすあの音は何?

秋葉原で「ハイル、安倍!」を叫ぶ日の丸軍団を見ると、まさしくヒトラーの突撃隊そのものであり、これから「お祭り騒ぎの若者たち」がどんどん出てくることは予想できる。そして、リベラルな思想、反戦思想の持ち主への弾圧がこれから起こってくるだろう。或る日突然、あなたの家に「特高警察」があなたを逮捕しにやってくる、ということもありうる。
平和を望むことが犯罪になる、という奇妙なことがこの世界にはあるのである。

このブログもいつ消えることになるか分からないが、とりあえず「12月16日事件」(衆議院選挙での不可解な結果)の記念に、W・H・オーデンの物語詩(ballad)を昔私が訳したものに少し手を入れて、紹介する。
若い恋人たち、あるいは夫婦の会話が2行ずつ繰り返される形の詩で、各連の1行目と3行目、2行目と4行目の末尾の語が原詩では韻を踏んでいるが、押韻まで訳出することはできないので、原詩も最後に載せておく。(原詩は新倉俊一「英詩の構造」から採った)

この詩を日本のプロ詩人が訳したものも幾つかあるが、みな私の意に満たない訳し方であった。私の訳もヘボかもしれないが、過去の訳は原詩の中心にある「恐怖」が感じられないものばかりなのである。その「恐怖」は第一連から存在しているのであり、「thrills」を「わくわくさせる」などと訳しては、詩が最初から台無しになる、と私は考えている。ここは「おびやかす」か「ぞっとさせる」とするべきだろう。










私の耳を脅かすあの音は何?

        W・H・オーデン (酔生夢人 訳)


私の耳を脅かすあの音は何?
谷を下ってくるドラムの音
   あのドラムの音は何?
あれは赤い服の兵士 それだけだよ 愛しい人
 兵士がやってきただけ

私の目に鮮やかに輝くあの閃光は何?
あんなに遠くから輝いて
   輝いて
彼らの武器に陽が射しただけだよ 愛しい人
 歩みにつれて輝くだけ

おお、彼らはあんな格好をして何をするの?
何のためにこの朝に
   この朝に
いつもの演習 それだけだよ 愛しい人
 でなければ人々を嚇しているだけ

おお、なぜ彼らは道を離れたの?
突然なぜ輪になるの
   輪になるの?
隊列を組み変えただけだよ 愛しい人
なぜ膝まづいたりするの?

おお、あの人たちお医者を呼びに行くのじゃない?
手綱を引いて その馬の
   その馬の
どうしてだい、傷ついた人はいないよ 愛しい人
軍の誰も傷ついてはいないのに

おお、彼らの捜しているのはあの白い髪の牧師さんじゃない?
あの牧師さんね
   ねえ、そうでしょう?
いいや、彼らは彼の戸口を通り過ぎたよ
訪れることもなく

おお、きっと近くに住む農夫の所だわ
あの農夫、あのずる賢い
   あのずる賢い奴
彼らはもう農家を離れたよ 愛しい人
彼らは今 駆け始めた

おお、あなたどこへ行くの?
ここに、私のそばにいて!
私に誓ったあの言葉は嘘だったの?
   嘘だったの?
いや、私はお前を愛すると誓ったね 愛しい人
だが私は行かねばならない

ああ、錠が壊される 扉が裂ける
彼らはこの扉へとひしめく
   ひしめく
軍靴の響きは床に溢れ
 彼らの眼は 火と燃えている
……… ………




O what is that sound which so thrills the ear

O what is that sound which so thrills the ear
Down in the valley drumming, drumming ?
Only the scarlet soldiers, dear,
The soldiers coming.

O what is that light I see flashing so clear
Over the distance brightly, brightly ?
Only the sun on their weapons, dear,
As they step lightly.

O what are they doing with all that gear,
What are they doing this morning, this morning ?
Only their usual manoeuvres, dear,
Or perhaps a warning.

O why have they left the road down there,
Why are they suddenly wheeling, wheeling?
Perhaps a change in their orders, dear,
Why are you kneeling?

O haven’t they stopped for the doctor’s care,
Haven’t they reined their horses, their horses ?
Why, they are none of them wounded, dear,
None of these forces.

O is it the parson they want, with white hair,
Is it the parson, is it, is it ?
No, they are passing his gateway, dear,
Without a visit.

O it must be the farmer who lives so near.
It must be the farmer so cunning, so cunning ?
They have passed the farmyard already, dear,
And now they are running.

O where are you going ? Stay with me here !
Were the vows you swore deceiving, deceiving ?
No, I promised to love you, dear,
But I must be leaving.

O it’s broken the lock and splintered the door,
O it’s the gate where they’re turning, turning;
Their boots are heavy on the floor
And their eyes are burning.

W・H・Auden

  

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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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