捕まっても「払えばいいんやろ」と開き直る者すらいるという。万引被害に悩む福井県内の書店やスーパーの担当者は「たかが万引と、罪の意識は薄い」と口をそろえる。「万引は、窃盗という立派な犯罪。考え方が非常に甘い」と憤るのは、小売店にとって被害が死活問題につながるからだ。
県内のある書店の万引被害は、ひどい時には年間100万円にも上った。活字離れで書籍の売り上げが低迷していることもあり被害額は年々減っているが、今でも年に10万~20万円ほどの被害がある。1冊の本で得られる利益は1割。10万円の被害を取り戻すには、100万円分の本を売らなければならない。
1冊盗まれるだけでも損失が大きい中、この書店では2008年、発売された「ハリー・ポッターと死の秘宝」が、30代の男に上下巻20セットを盗まれた。被害額は10万円。男は古本屋に持ち込み換金していた。中学生グループに数十冊のコミック本をかばんに入れて万引されたこともある。
不況が続く出版業界。小さな書店であればあるほど防犯対策にコストをかけられない。社長によると、県外では万引が原因で閉店に追い込まれた店すらあり、県内でもそうしたうわさは聞かれる。
近年は外国人グループによる大量万引も全国的に問題になっている。県内でも昨年、ドラッグストアで一度に化粧品100点以上を盗まれる事件があり、ベトナム人の男女3人が逮捕された。化粧品を転売しようと考え、ショルダーバッグに商品をごっそり入れるという荒っぽい手口だった。県警や福井地裁であった公判内容によると、4県で化粧品など総額648万円の被害が確認されている。
警察庁のまとめによると、17年に摘発された来日外国人による万引は3240件。氷山の一角とも考えられ、県内のある量販店の担当者は、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が4月に施行されるのを念頭に「外国人窃盗団による大量万引も警戒しないといけない」と話す。
県内で複数のスーパーを経営する会社の担当者は、万引の抑止には刑罰を重くする必要があると指摘する一方で、「万引はなくならないだろう」とも話す。加害者側に「たかが万引くらい」という認識があると思うからだ。
書店の社長は、万引した中学生の父親から「うちの子も悪かったけど、取られる方も悪いんじゃないの」と開き直られたことまである。「万引は犯罪だという当たり前の認識を世の中全体で持ってほしい」と切実な声を上げる。