「習近平は退陣せよ!共産党は退陣せよ!」
中国各地で起きた“異例”の大規模な抗議活動。上海ではタブーとされる体制批判まで飛び出しました。
厳しい言論統制が敷かれる中国でいったいなぜこのようなデモが起きたのか。
異例の3期目に入ったばかりの習近平指導部はどう対応するのか。
詳しく解説します。
(中国総局記者 松田智樹)
中国でいったい何が起きているの?
新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策に対する反発が強まっています。
世界各国が“ウィズコロナ”で規制の緩和に向かう中、中国は依然としてPCR検査の徹底や厳しい行動制限で感染を封じ込める姿勢を崩していません。
こうした政府の方針に対する人々の不満や憤りがマグマのようにたまり抗議活動が起きているのです。
抗議活動は広がっている?
中国では、11月に入って南部の広東省広州や内陸部の河南省鄭州などで「ゼロコロナ」政策に対する抗議活動が起きていました。
そして11月24日。
新疆ウイグル自治区の高層マンションで起きた火事をきっかけに抗議活動は一気に広がりました。
この火事では10人が死亡したと発表されましたが、インターネット上では厳しい感染対策で避難経路が閉鎖され、救助が遅れたという情報が拡散。
地元政府はすぐに記者会見を開いて否定しましたが、人々の間では「ゼロコロナ」政策で犠牲になったとして反発が強まったのです。
25日には新疆ウイグル自治区の中心都市ウルムチで抗議活動が行われ、大勢の人々が市内各地で続く封鎖の解除を求めたり、白い防護服を着た当局の担当者とみられる人たちと小競り合いになったりしました。
その後、抗議活動は全国に飛び火。
週末となった26日、27日には首都・北京や上海、広州、内陸部の湖北省武漢など10以上の都市で大規模な抗議活動が行われたとみられます。
今回の抗議活動 何が“異例”なの?
まず、中国政府の政策に反対する抗議活動が各地で一斉に行われたこと自体、異例です。
中国では共産党の一党支配のもと厳しい言論統制が敷かれているため、国の政策を批判するデモはほとんどありません。
さらに今回、上海で行われたとみられるデモでは大勢の人たちが「習近平は退陣せよ」「共産党は退陣せよ」などとシュプレヒコールをあげて警察官に取り押さえられていました。
中国では習主席や共産党を直接批判するのは「タブー中のタブー」でこうした動きが出たことは極めて異例のことだと言えます。
「共産党の指導部に向けられた抗議活動は1989年に起きた天安門事件以来」という見方が出ているほどです。
香港メディアは、多くの学生が参加した天安門事件と同様、今回も習近平国家主席の母校で北京にある名門・清華大学や北京大学といった50を超える大学などでも抗議活動が行われたと伝えています。
抗議活動で何を訴えているの?
各地で行われた抗議活動では「封鎖はいらない、自由がほしい」とか「PCR検査は不要、食事が必要」などといった訴えが掲げられていました。
抗議活動に参加した男性は「感染拡大から2年以上が過ぎてウイルスも以前より毒性が弱まったと言われているにもかかわらず、いまだに政府は毒性が強いと言い続けている。政治主導の感染対策をやめて科学的な根拠に基づいた対策を要求する」と強調していました。
今回の抗議活動で特徴的なのは参加した人の多くが白い紙を掲げていることです。
これは「ゼロコロナ」政策についての批判や言論が封じ込められていることに抗議の意思を示すためだとみられています。
実は白い紙を掲げる抗議活動は2020年、締めつけが強まる香港でも行われていました。
中国政府が主導して施行された「香港国家安全維持法」によってそれまで使われていたスローガンが違法だとされたため、言いたいことが封じ込められたことに抗議の意思を示すとともに、取り締まりの対象となることを避けるために白い紙を掲げたのです。