http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161030-00050024-gendaibiz-bus_all
<転載開始>
現代ビジネス 10/30(日) 6:01配信
今年も「秋の交通安全運動」が実施され、少なくないドライバーがキップを切られた。だが、それは本当に「交通安全のため」の取り締まりだったのか……。反則金を稼ぐ警察の手口は汚すぎる。
歩道と車道がセパレートされた片側一車線の広い直線道路。見たところ速度標識もない。60㎞/h道路だと判断し、アクセルを踏み60㎞/hに加速。やや加速が効いて70㎞/h近くになった。十分広い道路なのでこの程度のスピードなら危険性はないと思った、その瞬間――。
「ピッ、ピィー」
突然、側道から飛び出して来た警官が、「とまれ」の赤旗を振る。
「はい、35㎞/hオーバーですね。ここは40㎞/h制限ですよ。標識を見なかったのですか」
エッ、一体どこに標識があったのか? 男性は事態を飲み込めないまま、赤キップ(30㎞/h以上の速度違反、それより下は青キップとなる)を切られ、免許停止処分になってしまった……。
「これじゃあ標識が見えるわけがない。なんて汚い手を……。それが警察のやり方か。セコい、セコすぎる」
この男性から相談を受けたという、交通評論家の鶴田光秋氏が語る。
「この場合、免停になった彼に過失はまったくありません。道路標識は、歩行者や運転者に『わかりやすく、見やすい場所』に設置し、常に正常な状態に保つようにしなければ法律上有効とはいえない、と道路交通法解説にも記されている。
警察は、広くてスピードの出しやすい直線道路で、標識を故意に見えづらいまま放置して、検挙しやすくしていた可能性があります。これは不当な取り締まりですよ。こんな場所で『ネズミ捕り』をして反則金を稼ぐのは、交通安全目的ではなく、卑怯そのものです」
鶴田氏は、この男性に警視庁に異議申し立てを行うようにアドバイスをした。ところがその直後、警察は思いもよらぬ行動に出た。
自分たちは「不当なことは何もしていない」と言わんばかりに、標識を隠していた木を切り落としたのだ。これまでは見えていなかったと自ら宣言したようなものである(しかもその後、この場所でネズミ捕りが行われることはなくなった)。
さらにこの男性の「35km/hオーバー」自体が、スピードを「誤測定」されていた可能性もあるという。
「警察はスピードを測る際にレーダー装置を使うのですが、ガードレールなどの金属に当たると正確に測定することができない。つまり投射角によっては、実際のスピードより速く計測してしまうことがあるのです。違反車を多く捕まえるために、わざとやっている可能性もある」(前出の鶴田氏)
その他にもまだまだセコい「ワナ」はある。
たとえば、地下道の侵入直前に「二輪車通行禁止」の標識がある場所。ドライバーは直前で気づいてもそのまま進むしかなく、出口で警察が待ち構えているというわけだ。
もう一つのワナが、住宅街などにある、見えづらい「一時停止」の標識だ。標識に気づかずに、一旦停止せずに進むと、角を曲がった瞬間、白バイが待ち構えている。
「制限速度を順守していた車が後ろから煽られたので、スピードを上げたところ、後ろの車が実は覆面パトカーでそのまま捕まえられた」なんていうひどい話もある。
元白バイ隊員は「陸橋やトンネルの出口、下り坂などスピードを出しやすいところで待ち伏せするのは常套手段」と語る。
「東京の場合、江戸川区大杉の京葉陸橋、同区の松本連続陸橋、通称・東京湾岸道路と呼ばれる国道357号の葛西臨海公園や環七大井ふ頭。それ以外にも、千住大橋、国道17号新大宮バイパスの笹目橋、その隣の戸田橋、東京ゲートブリッジなど定番のスポットです。
国道246号の新二子橋(多摩川)から都内に入ってくるところは、もう20年以上前から変わらず覆面パトカーの取り締まりポイントになっています」
「交通事故を防ぐため」という表看板を掲げながら、本当に危険な場所ではなく、ただ違反をしやすい場所を見つけ、ワナを仕掛け、待ち伏せして、罰金を取り立てる。しかも何年間も同じ場所でそれをやる(ちなみに雨の日は取り締まりが少なくなる)。これが本当に警察のやるべき「仕事」なのか。
前出の鶴田氏はこう指摘する。
「私は違法運転を奨励するつもりはさらさらありません。わざわざ『違反』を『させて』カネを巻き上げる、警察の汚いやり方に対して異議を唱えているのです。
本当に交通事故を減らす目的なら、コソコソと茂みや電柱の陰に隠れたりせず、堂々と表に立って『この区間は注意してください』とドライバーたちに呼びかけるべきではないでしょうか。そのほうが抑止力になるでしょう。
それを一時停止で止まらなかったら『引っかかった』という態度で、物陰から出て来て捕まえるのはおかしい。
また標識が分かりづらい右折禁止の場所で、右折した後に警察官が待ち構えていることがありますが、本当なら右折の前にいなければならない。違反をする前に『指導、警告』するのが本来のあるべき姿じゃないですか」
警察の取り締まりのやり方については、'13年に当時国家公安委員長を務めていた古屋圭司氏もこう指摘している。
「取り締まりのための取り締まりになっている。『本当に危険な場所』よりも、『警察が検挙しやすい場所』で、優先的に取り締まりが行われている傾向がある。これは警察の信頼という視点からも疑問符がつく。取り締まられた側も納得できる取り締まりをしなければならない」
不当に検挙されたドライバーには、自らの違反を反省するどころか、『だまし討ちにあった』『他の運転者もやっているのになぜ自分だけ』という反感や不公平感が生まれる。
それにより運転者の意識が『今後違反をしないようにしよう』ではなく、『今後違反は見つからないようにやろう』になってしまい、逆効果になる可能性もある。
では、なぜ警察は卑怯なワナを仕掛けてまで、取り締まり件数を増やすことに躍起になるのか。理由は簡単。それは「ノルマ」があるからだ。
交通ジャーナリストの今井亮一氏が語る。
「警察は絶対にノルマがあることは認めませんが、それはあくまで建前。以前、違反キップを捏造し逮捕された警察官が、裁判で『(上司から)違反キップをとるまで帰って来るなと言われた』と証言していたように、ノルマは存在します。特に4月、9月の交通安全月間はノルマが厳しく設けられるため、ドライバーは注意が必要です」
中には、反則金のことを「稼ぎ」と呼び、「おいしく取り締まれる地点」を飲み会で情報交換している警察官までいる。
事実、総務省が公表している「交通安全対策特別交付金制度」では、予算として反則金収入を約700億円(平成26年度)と見積もっている。これを「ノルマ」と言わずになんと言うのか。これでは「警察はカネのために取り締まりをしている」と言われても致し方ない。
ちなみに徴収された反則金は一旦、国庫に納められたのち、交通安全対策費として各都道府県・市町村に交付される。これらのカネは主に、ガードレールや信号などの設置、管理に使われるのだが、それを請け負う業者が「警察OBの天下り先になっている」のは有名な話だ。
違反とも言えない違反で検挙されたドライバーの悔し涙がカネに変わり、警察OBの優雅な余生を支えているとすれば許しがたい。
ではもし、不当な取り締まりを受けた場合はどうすればいいのか。「運が悪かった」と諦めるしかないのか。
前出の鶴田氏は「捕まっても、納得いかないのならサインを拒否することができる」と語る。
「まず警察から『免許証を出せ』と言われても、渡してはいけません。見せて確認させ、すぐ仕舞いましょう。無免許運転、飲酒運転、過労運転の場合を除き、ドライバーが免許証を提示する義務はありません。
しかし、サインをしたらそれまで。自白したと見なされる。納得いかない場合はサインを拒否し、不当な検挙にはちゃんと『NO』と言うべきです」
だが、実際は、「揉めるくらいなら」と、納得いかないまま反則金を支払って済ます人がほとんど。警察から見れば、従順なドライバーはまさに「カモ」なのだ。
それをいいことに、警察はますます「稼ぎ」を増やす手を考えている。実は幹線道路だけでなく、生活道路や通学路の速度取り締まりを強化する動きが始まっているのだ。
前出の今井氏が語る。
「狭い生活道路では、違反車両を止めて手続きする場所がないので、基本的に今まで速度違反は取り締まりませんでした。
そこで警察が考えたのが、幹線道路で使われている無人式の測定器『オービス』(スピード違反した車は写真を撮られる)の導入です。今春から埼玉県、岐阜県において試行運用され、全国の生活道路にオービスが導入されるのは時間の問題です。
さらに、私が両県に開示請求した資料によれば、本来オービスは赤キップのみだったのに、青キップも対象となっていた。通学路は制限速度が30㎞/hなので、40㎞/hで走ったら、人通りの少ない早朝や夜間であっても、自動的に反則金を科せられる時代が迫っているのです。
もちろん道幅の狭い道路でのスピード違反は問題です。ただ、この問題を解決したいなら、減速ロードハンプ(かまぼこ型に盛り上がった、プラスチックまたはゴム製のプレート)を道路に設置するのが、もっとも効果的な方法です。これでは益々ドライバーの反感を煽るだけです」
確かに交通ルールを守ることは重要だ。だが、いくら取り締まりを強化しても、国民からカネを巻き上げるのが目的では、いつまでたっても交通事故は減らない。
警察のセコい魂胆は、国民にはとっくにバレている。恥を知ったほうがいい。
「週刊現代」2016年10月29日号より
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