簡単に言えば土地私有制度をやめる、ということで、その具体的プログラムは引用部分の前のほうにある。まだ詳しく読んではいないが、無理のないプログラムのように思えるし、現代の新自由主義的資本主義の牢獄を打ち破る大きなポイントのひとつが土地問題だろうと思う。
大西氏はさらに利子というもの、不労所得というものに否定的であり、これらは明白に金融資本主義の否定である。では、共産主義かと言うと、私有財産そのものは否定していないのだから、どちらかと言えば社会主義的な思想と言うべきだろう。あるいは、西洋的な搾取的資本主義の「経済の論理」の対極にある東洋的な「経世済民」の思想である。
私が何度も言うように、社会主義の本質とは、宮沢賢治の言葉である「社会がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」というヒューマニズム(反エゴイズム)なのである。(なお、私は「プロレタリア独裁」という言葉が大嫌いであり、マルキシズムの戦闘的姿勢が社会主義の健全な発展を阻害したと思っている。)ヒューマニズムの観点から見れば、政治的な右も左も関係ないのだ。
(以下引用)
若者に夢とチャンスを
今の日本の社会に若者が夢を描けないのは当然です。土地の私有制度と、その価格の高止まりが彼らを搾取しているのですから。多くの若者は学校から卒業した瞬間、社会の最底辺からスタートします。安い賃金で働いて稼がなければ生きられない状態からスタートするのです。自活しようとすれば、家賃を払い、生活必需品を買います。全ての価格には金利が織り込まれ、お金を使う度にそれを負担するのです。その中には、土地に融資された膨大な借金の金利も含み、なおかつそれで発行された膨大なお金が下支えする地価によって高止まりする家賃を払い、ダブルで搾取されます。高止まりした家賃は、何か新しいことを始める時には大きなハードルです。アイデアがあっても、それを実行すること自体、非常に難しくなるのです。結果、大企業につながれたまま、新しいアイデアを生み出せない老朽化した経営陣の言われたままに働くことになります。社会の新陳代謝が失われるのも当然です。それもこれも、源流はバブルにあります。土地の私有制度、そして土地担保融資が、人の欲望を膨らませ、借金を膨らませ、地価を膨らませ、その連鎖を限界まで繰り返し、何も生産しないまま、最後には借金だけが残ったのです。不良債権処理したのはごく一部、その他の不良債権は広く薄く一般に押し付けられ、少しも減っていません。その証拠に「政府の借金を税金で返してはならない」にあるM2のグラフを見れば、全体のお金の量、借金の量はバブル以降も増え続けているのが一目瞭然です。銀行融資は減ったものの、その分政府の借金でお金を発行し続け、見事に国民全員に押し付けられています。ですから膨大な金利も高止まりした地価もそのまま、バブルの時期には生まれてもいない若者たちを搾取しているのです。こんな馬鹿な話があるでしょうか?ですから、この仕組みを壊さなければならないのです。でなければ、これから生まれて来る全ての子ども達を搾取し続けることになります。逆に、もし勇気を持ってそれを断行し、やる気とアイデアのある若者が、土地を買うことなく、それを使うことができるようになれば、日本はチャンスと夢に溢れる国に再びなれるのです。