大略を言うと
1 多臓器不全による死は、通常は
a 老衰か
b 癌の末期
しかない。
aはもちろん42歳という年齢では、ありえない。
bは、直前まで(肉体労働的な)仕事をしていたことから、考えられない。
2 それ以外の原因は3つしか(自分には)推定できない。
d 劇症肝炎か
e 感染症による敗血症か
f 急性白血病
の3つである。
d は、簡単に治療できるはず(なので考えにくい)。
e は、患者は高齢者がほとんどなので考えにくい。(夢人注:なぜ老人だけそうなるのか、説明は無し。)
fは、適切な治療をしたらほとんど確実に治る。
3 結論として、自分(松本)には、伝聞情報のみからは確実なことは言えない。
ということだが、2のf(急性白血病)に関する部分だけを取り出すと、(非常に言葉を濁しているが)あることが推測できる。その部分を先に引用する。(赤字部分は夢人による強調)
最後に残るのは急性白血病です。急性白血病はざっと11種類の病型に分類されており、30年前私が医者になった当時など、診断がついて1週間以内に95パーセントの人が亡くなるとか、骨髄を採取して検査してもその結果が出るまでに亡くなるとか、一刻を争う「不治の病」でした。ただ、この10年ほどで素晴らしい薬が次々開発され、95パーセントの人が亡くなるタイプが95パーセント治るようになり、これで死なせたら逆に医者が訴えられるくらい「治る病気」になりました。
しかし、それでも診断が確定してすぐに治療にとりかかった場合の話で、診断や治療が上手くいかなければ、数日で死に至ることは今でもあります。
上の赤字部分に注意すると、松本氏は「これは治療ミスだったのではないか」と考えているとしか思えない。だから、言葉を濁して、その次に「言い訳する気はありませんが、この少ない情報で予測するのは非常に難しく、このくらいしか思い浮かばないというのが本音ではあります。」などと付け加えて、この発言がトラブル化することを避けているように見える。つまり、「医者仲間の仁義(身内同士の安全保障条約)」である。これは公務員などにも見られることだ。
まあ、これが治療ミスだったにせよ、私としては、当人がそのような難病にかかった時点で医者には責任は無い、と考えている。医者にかからなかったら死ななかったというわけではないのだから、「(カネ儲けのための)癌治療によって、死ななくてもいい人間が死んだ」場合に比べたら、はるかに罪は軽いと思う。
ただし、どういう原因で「急性白血病」などになるのか。医学界は、それについて明確な考えを表明しないとおかしいと思う。まあ、そんなのは自分で調べろ、と言われるかもしれないが、なぜそんな病気にかかるかの公衆への注意もなく、病気にかかった患者だけを相手にする、というのは医学本来の目的から外れる、それこそヒポクラテスの誓いに背く行為ではないだろうか。
(以下引用)
【専門家の目】急死した西武・森コーチ 劇症肝炎、敗血症、急性白血病か
西武の森慎二投手コーチが28日に多臓器不全のために42歳の若さで亡くなった。25日に福岡市のヤフオクドームで行われたソフトバンク戦の試合前、球場入り後に体調不良を訴え病院へ。そのまま入院し、帰らぬ人となった。あまりにも急なことに関係者は一様に驚きを隠せない。森コーチにどんな異変が起こったのか。「甲南回生 松本クリニック」(兵庫県芦屋市)の松本浩彦院長に聞いた。
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西武ライオンズの森投手コーチ。25日に体調不良を訴え入院、28日に多臓器不全で亡くなったという情報しかありません。多臓器不全などという状況は、普通はがんの末期や、老衰で今日明日がヤマ、などという時にしかお目にかかれない、重病の最後の最後に見られる症状です。
42歳で前の日までプロ野球の投手コーチという仕事をしていたとなれば、がんの末期とは考えられません。もちろん老衰もあり得ない。となると、私が推測できるのは以下の3つです。劇症肝炎、感染症による敗血症、急性白血病。
もともと慢性ウイルス性肝炎をもっておられたどうかは分かりませんが、肝炎ウイルスのキャリアが、大酒した後などに突然、劇症肝炎に変わることがあります。これなら入院3日で手の施しようもなく亡くなることはあり得ます。ですが今や肝炎ウイルスは飲み薬で退治できる時代ですから、B型でもC型でも肝炎ウイルスのキャリアであれば治療を開始もしくは終わっていてしかるべきです。
次に感染症による敗血症ですが、ショック状態から播種性血管内凝固症候群(DIC)という状態になると、あっという間に多臓器不全に進行します。その感染症ですが、いまの日本で考えられるとしたらマダニが媒介するウイルスによって起こる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という病気で、今年に入ってすでに50名以上の方が亡くなっています。ただ、ほとんどが80歳前後のご老人ですので、これも考え難いところです。
最後に残るのは急性白血病です。急性白血病はざっと11種類の病型に分類されており、30年前私が医者になった当時など、診断がついて1週間以内に95パーセントの人が亡くなるとか、骨髄を採取して検査してもその結果が出るまでに亡くなるとか、一刻を争う「不治の病」でした。ただ、この10年ほどで素晴らしい薬が次々開発され、95パーセントの人が亡くなるタイプが95パーセント治るようになり、これで死なせたら逆に医者が訴えられるくらい「治る病気」になりました。
しかし、それでも診断が確定してすぐに治療にとりかかった場合の話で、診断や治療が上手くいかなければ、数日で死に至ることは今でもあります。言い訳する気はありませんが、この少ない情報で予測するのは非常に難しく、このくらいしか思い浮かばないというのが本音ではあります。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ) 兵庫県芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、(社)日本臍帯・胎盤研究会会長。