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メモ日記2

#2   何を読み取るか

森村誠一のあるエッセイを読んでいたら、その中に山本周五郎の短編の話が出てきたのだが、それを読んで奇妙な思いにとらわれた。ある下級侍の悲壮な死の話なのだが、その死に方が宮谷一彦の傑作漫画「ワンペア・プラス・ワン」の死に方とまったく同じなのである。(その死に方が話全体に大きな意味を持つ死に方なのだが、ネタばらしになるのでこれ以上は言えない。推理小説に限らず、未読の人の感動を削ぐネタばらしはするべきではない。)奇妙だというのは、実は私は山本周五郎のこの作品も宮谷一彦の作品も読んでいたはずなのに、このエッセイを読むまで、私はこの両作品の類似性にまったく気がつかなかったからである。一方が時代劇で、もう一方が現代劇だという相違もあるが、それよりももっと大きな原因は、一方は文章で、もう一方は視覚的なメディアだという違いだろう。要するに、私には文章をイメージ化する能力が無かったということである。だから、最初から視覚的表現として与えられたテーマに感動することはできたが、文章からは十分な感動は得られなかったのである。これは山本周五郎の作家としての手腕の問題では決してなく、私自身の文章受容能力の問題である。なにしろ、森村誠一は、この作品と出会うことによって作家を目指したというのだから。
同じ本を読んでも受け取るものはそれぞれ違うということを案外誰もわかっていない。作品を批判する前に、まずは、「自分は読めているか」と反省するべきだろう。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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