店に対する客の「無意識の優越感」の理不尽さについて、多くの人が反省すべき指摘をしている。川田さんとは、元プロレスラーで、ラーメン屋を開業した人。
(以下引用)
川田さんは、基本的に厨房をひとりで回しているので、お客さんとおしゃべりをしている時間はない、と仰っています。
まあ、それはそうですよね。でも、「ファン」の中には、そんな状況を目の当たりにしているにもかかわらず、いろいろと話しかけてくる人もいるそうです。
「有名人の店」も、良いことばかりじゃない。
10人で380円のデザート1個、なんて、ファンというより、営業妨害のために雇われた人なんじゃないか、と思えてきますよね。ファンだったら、ラーメン代くらい出すのが当たり前、のような気がするのだけれど、それが通じる人ばかりではないのです。
この本の中でも、「ランチタイムにラーメンを食べた方はカレーライス無料」というサービスを始めたら「無料のカレーだけくれ!」という人がたくさんやってきた、という話を書いたけど、こんなのはほんの一例。とにかく、サラリーマン生活とは違って、常識的な受け応えだけしていればいい、というわけではなくなる。
自分が客としてラーメン屋に通っていた時のことを思い返してみてもそうだが、無意識のうちに「客のほうが偉い」という言動を取っているケースを見かけないかな。
たとえばあるお客さんがビールを飲んでいる時、つい手を滑らせて、コップをひっくり返してしまったとする。
店舗には過失はないとしても、基本的に店員は「気にしなくていいですよ」どころか、「大丈夫ですか?」と心配するように声をかけ、代わりのビールまで提供する。テーブルからコップが落ちて割れてしまっても、まったくの不問だ。
実は割り箸は高いというエピソードを前に書いたけど、こぼしたビールで割り箸がびしょびしょになってしまったら、もう使いものにならないから、泣く泣く廃棄処分にするしかない。細かい話だけど、爪楊枝だって同じだよね。こういう状態になったら、すべて店側が負担するのが、暗黙の了解になっている。
俺が客として飲食店に通っていた時にこういう状況に陥ってしまったら、「すいませんね」とは口にしていたけれども、あとは店員に言われるままにしていた。よくよく考えたら、あきらかにこっちが悪いんだけど、なんとなく「客のミスは悪くない」という空気がどこの店でもできあがってしまっているんだよね。
いざ、経営する側に回ったら、そういうロスがなにげに痛手になる。
さっき補充したばかりの割り箸が一瞬にしてダメになってしまったりすると、その場ではさすがに顔には出さないけど、内心「ああ~っ」となるもんね。お客さんにコップを割られても、ウチでももちろん請求できないから。
とにかく飲食業や接客業をやっていると、一時が万事、こんな感じになることが多いんだ。挙げればキリがないけど、ほかにもいくらでもある。