「ギャラリー酔いどれ」から転載。
天皇の「生前退位」については憶測だけが乱れ飛んでいるが、それもまた面白い。概して、安倍政権の改憲路線に対する天皇の抵抗という見方が、リベラル側には多いようだ。それも当然で、天皇こそが日本国憲法の最大の守護者という見方は、左右を問わず一致しているだろう。
天皇を見かけ上の最大権力者とし、それを操ることで自分たちが好き勝手に政治を動かそうと考えていた連中は、「私は簡単に君たちの神輿にはならないよ」と天皇自身から拒絶されてしまっているわけである。
現皇太子も、今上天皇の言行を見て、その影響を大きく受けているためだろう、今上天皇ほどではないが(というより、発言が控え目なため目立たないだけだろうが)、憲法遵守意識はかなり高い。天皇というのがいかにあるべきか、という模範を常に目の前で見続けてきたのだから、当然と言えば当然だが、世間では、教師の子供が親に反発して不良になる例も多いのだから、これは日本という国にとって幸いだった。まあ、皇室否定論者たちにとっては、イギリス王室のようにスキャンダルだらけの方が、皇室廃止論が打ち出しやすかっただろうが。
現皇太子に男児がいないのが問題なら、側室を置いてはどうか。(笑)まあ、そうまでしなくても、次の次は秋篠宮のお子さんでもいいし、なんなら女性天皇でもいい。
私は貧乏人だが、天皇と地位を交換するか、と言われればお断りする。あんな、プライバシーも何もない、あらゆるものに縛られた生き方を耐え忍んでいるだけでも天皇という存在を尊敬する。今上天皇の言動の立派さは、言うまでもなく誰も真似もできないことだ。ほとんど聖人である。生前退位することで、そうした、緊張に満ちた生活から解放され、やっと少しは自由になれるのではないか。
(以下引用)
面白い、盲点だった、
◆http://lite-ra.com/2016/07/post-2416.html
リテラ 2016.07.14
◎明仁天皇の「生前退位の意志表明」は
安倍政権と日本会議の改憲=戦前回帰に対する最後の抵抗だった!
いったいこれはどういうことなのか。
昨日、 NHKが報じた「天皇が生前退位の意向」。
NHKの情報源は「宮内庁関係者」ということだったが、
その直後に宮内庁の山本信一郎次長が「そうした事実は一切ない。
陛下は憲法上のお立場から、皇室典範や皇室の制度に関する発言は
差し控えてこられた」と完全否定した。
さらに、時事通信によると、深夜には、風岡典之宮内庁長官も
「(皇室の)制度については国会の判断にゆだねられている。
陛下がどうすべきだとおっしゃったことは一度もなく、あり得ない話だ」と否定した。
また、菅義偉官房長官もオフレコながら「承知していない」と事実を認めなかった。
では、NHKは何を根拠にこの「生前退位の意向」報道に踏み切ったのか。
常識的に考えると、NHKのような官僚的なメディアがこうした重要な情報を
宮内庁長官のオーソライズなしに報道するというのはありえない。
もしそれができるとしたら、天皇周辺から直接、情報をとっているというケースだろう。
実際、今回のNHKの情報源は、天皇本人にきわめて近いスジではないかといわれている。
「今回、スクープしたのはNHKの宮内庁担当のHという記者なんですが、
彼は秋篠宮に食い込んでいる。そんなところから、
天皇が秋篠宮を通じて意志を伝えたのではないかといわれています。
実際、秋篠宮は数年前、記者会見で「(天皇の)定年制が必要になってくると思います」
と述べたことがあり、このときも天皇の意向を代弁したものだといわれました。
天皇はこのころからしばしば生前退位の制度を作るよう要望を出されていたのですが、
1年前くらいからその意向が非常に強くなったようです」(全国紙宮内庁担当記者)
たしかに、NHKがここまで踏み込んで報道したというのは、それくらい天皇の意志が強い
ということだろう。
実はNHKは参院選を前にこのニュースを出そうとしたものの、
官邸からストップがかかって、一旦、報道を断念している。
普通ならそれでたち消えになるところを、NHKはもう一回、
参院選が終わったタイミングで出してきた。
これは、官邸を超える存在、つまり天皇サイドからの絶対的な後押しがあった
としか考えられない。
というのも、生前退位こそが、今、安倍政権や日本会議が復活を目指している
大日本帝国憲法の思想と真っ向から対立するものだからだ。
実は、生前退位というのは江戸時代後期までの皇室ではしばしば行われていた。
ところが、明治になって、国家神道を国家支配のイデオロギーと位置づけ、
天皇を現人神に仕立てた明治政府は、
大日本帝国憲法と皇室典範によって、この生前退位を否定、 天皇を終身制にした。
「万世一系」の男性血統を国家の基軸に据え、天皇を現人神と位置づける以上、
途中で降りるなどということを許すわけにはいかない。
終身制であることは不可欠だったのだ。
つまり、明仁天皇はここにきて、その明治憲法の真髄とも言える終身制をひっくり返し、
真逆の生前退位を打ち出したのである。
天皇が生前に退位するということは、天皇は国家の「役職」にすぎない
ということを示すことだ。
役職だから、時期が来たら退位する。役職を果たせなくなったら交代する。
もし、これが制度化されたら、天皇をもう一度、現人神に担ぎ上げ、
国民支配のイデオロギーに利用することは難しくなる。
そのために、天皇はこの「生前退位の意志」を明確にしたのではないか、というのだ。
これはけっして、妄想ではない。
天皇と皇后がこの数年、安倍政権の改憲、右傾化の動きに危機感をもっていることは、
宮内庁関係者の間では、常識となっていた。
実際、第二次安倍政権が発足し、改憲の動きが本格化してから、
天皇、皇后はかなり具体的で踏み込んだ護憲発言を何度も口にしている。
たとえば、2013年には、天皇が誕生日に際した記者会見で、記者の
「80年の道のりを振り返って特に印象に残っている出来事を」
という質問にこう答えている。
「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、
守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、
今日の日本を築きました。
戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ、改善していくために
当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています。
また、当時の知日派の米国人の協力も忘れてはならないことと思います」
日本国憲法を「平和と民主主義を守るべき、大切なもの」と最大限に評価した上で、
わざわざ「知日派の米国人の協力」に言及し、
「米国による押しつけ憲法」という右派の批判を牽制するような発言をしたのである。
また、美智子皇后も同年の誕生日に、憲法をめぐってかなり踏み込んだ発言をしている。
この1年で印象に残った出来事について聞かれた際、皇后は
「5月の憲法記念日をはさみ、今年は憲法をめぐり、例年に増して
盛んな論議が取り交わされていたように感じます」としたうえで、
以前、あきる野市五日市の郷土館で「五日市憲法草案」を見た時の思い出を
以下のように記したのだ。
「明治憲法の公布(明治22年)に先立ち、地域の小学校の教員、地主や農民が、
寄り合い、討議を重ねて書き上げた民間の憲法草案で、
基本的人権の尊重や教育の自由の保障及び教育を受ける義務、法の下の平等、
更に言論の自由、信教の自由など、204条が書かれており、
地方自治権等についても記されています。
当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも40数か所で作られていた
と聞きましたが,近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意欲や、
自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。
長い鎖国を経た19世紀末の日本で,市井の人々の間に既に育っていた民権意識を
記録するものとして,世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います」
では、なぜ、天皇は改めて、生前退位の姿勢を強く示したのか。
新聞・テレビはたんに「自らの体調を考慮」などと報じているが、
そんなことでこの行動は説明できない。
なぜなら、現行の皇室典範でも天皇が公務に支障がある場合は、
摂政をおくことができるからだ。
実は、宮内庁関係者の間では、今回の「生前退位の意志」報道が、
安倍政権の改憲の動きに対し、天皇が身を賭して抵抗の姿勢を示したのではないか、
という見方が広がっている。
日本国憲法と同様の理念をもった憲法が日本でもつくられていたことを強調し、
基本的人権の尊重や法の下の平等、言論の自由、信教の自由などが、
けっして右派の言うような「占領軍の押しつけ」などでないことを示唆したのである。
また、天皇、皇后は日本国憲法の精神に沿った新しいかたちの皇室作り、
皇室の旧弊の改革にも熱心に取り組んできた。
小泉政権のときに、女性・女系天皇が検討されたのも、
実は明仁天皇の意向があったとされているし、皇居や御用邸を一部開放、
最近は、自分の葬儀や墓について、陵墓を縮小して、
埋葬を土葬から火葬へ切り替えたいという希望も表明している。
しかし、安倍首相やそれを支える右派勢力にこうした天皇皇后の姿勢を
真摯に受けとめようという気配はまったくない。
それどころか、八木秀次など御用評論家に天皇批判をさせる一方、
改憲の動きをますますエスカレートさせた。
そして、先の参院選ではとうとう改憲勢力が3分の2を超えた。
しかも、安倍政権の背後に控える改憲の発信源は、戦前回帰を狙う日本会議だ。
日本会議の改憲の究極の目的は、まさに、明仁天皇が脱却を目指してきた
大日本帝国憲法の復活であり、
自民党の改憲草案もその明治憲法回帰の延長線上にある。
もし、そんな方向での改憲が進められれば、これまで進めてきた護憲と皇室改革が
水泡に帰す。天皇はこれに相当な危機感を抱き、
再び天皇が「現人神」として利用されることがないよう「生前退位」の制度化
の流れを作り出そうとしたのではないか。
こうした見方は、まったく報道されていないし、
これからも報道されることはないだろうが、
皇室取材をしている記者やジャーナリストの間では、一般的な認識になっている。
海外メディアの中には、今回の行動が安倍首相の改憲に対するものである
と書いている新聞もある。
たとえば、米「ニューヨークタイムズ」は13日付けの紙面で、
「生前退位の知らせは、まさに安倍晋三総理の自民党が参議院で圧勝した
3日後のことだ。
安倍総理は改憲発議の要件である3分の2議席を獲得したのである。
安倍氏は長年にわたり、日本の完全な戦争放棄を謳う憲法の条文を覆したい(overturn)
という野望を抱いている」と書いた上で、
「天皇は公的な政治的権限を有していないにせよ、今上天皇が生前退位によって
皇位を継承させる徳仁皇太子の存在は、
安倍首相が目指す憲法改正と好対照をなしているかもしれない」と指摘している。
一方、安倍官邸や日本会議は逆に、この報道に苛立ちを隠せない。
官邸は、一旦は報道を天皇の強い希望ということで、渋々参院選後の報道をOKしたものの、
オフレコで、菅官房長官がNHKに激怒するコメントを発しているという。
また、安倍政権の御用学者で、日本会議常任理事でもある百地章日本大学教授は
朝日新聞に「明治の皇室典範をつくるときにこれまでの皇室のことを詳しく調べ、
生前退位のメリット、デメリットを熟考したうえで最終的に生前譲位の否定となった。
その判断は重い。生前譲位を否定した代わりに摂政の制度をより重要なものに位置づけた。
そうした明治以降の伝統を尊重すれば譲位ではなくて摂政をおくことが、
陛下のお気持ちも大切にするし、今考えられる一番いい方法ではないか」と、
困惑を隠しきれないトーンで生前退位を否定するコメントを出した。
天皇の身を賭した最後の改革への試みは果たして実を結ぶのか。
安倍政権は官邸に渋々、皇室典範の改正の検討チームをつくったといわれているが、
明治憲法を否定する「生前退位」に本気で取り組むとは思えないのだが……。
「ただ、安倍さんは歴史に名前を残すということにものすごい執着がありますからね。
皇室典範を改正し、自分の任期中に生前譲位ということになれば、
元号を自分の手で変えることができる。
意外と深く考えずにそっちに乗る可能性もあります」(政治評論家)
いずれにしても、安倍の頭の中にあるのは天皇を政治利用することだけ。
こういうのをきっと連中の用語では「君側の奸」というのだろう。
(エンジョウトオル)
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