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所有権とは何か

「武田邦彦のブログ」から転載。
この世の罪悪はすべて「執着」から起こると私は思っているのだが、執着の最たるものが所有への執着だろう。だが、いったい、「所有」とは何か。「所有権」とは何か。
いったい、私が何かに対して、所有権を主張できるだろうか。すべては私がこの世に生まれる前から存在し、誰かが手を加えて付加価値を付けたものだ。我々が手にするすべてのものは、最初にそれを作った人間が「永遠の著作権や永遠の特許」を所有していれば、誰も手にすることはできないのである。茶碗一つにしても、「土を焼いて土器や陶磁器を作ること、茶碗形の形を作ること」を誰か一人の占有物としていれば、我々の手に入ることは無かったわけである。
発明者や発見者が「所有権」を放棄したからこそ、それは人類全体のものとなり、人類の文化と文明を発展させ、人類を幸福にする役に立ってきたのである。
だが、今の時代は、「所有」や「財産」が一部の人間によって特権的に占有され、その範囲がどんどん拡大されることで、相対的に人類全体の貧困化が進んでいる。著作権など、「新しい所有権」の設定はその一つだ。
我々は、「所有権」というものを自明の前提とせず、根本から考え直す時期に来ているのではないだろうか。それによって、人類全体の精神的・文明的次元上昇が起こるだろう、と私は考えている。


(以下引用)



五条川の桜・・・人間の活動と報酬





 



「20140404527527.mp3」をダウンロード



 


日本中、どこを歩いても見事な桜の時期になりました。多くの日本人が「ああ、日本に生まれてよかった」と思う時期でもあります。


 


そんな中、名古屋の少し北に、大口町、江南市、そして岩倉市を流れる五条川という川があります。そして、「五条川の桜」として知られる桜並木は、桜自身が見事であるとともに、桜が散り始めると川面いっぱいにピンクの葉が散り、それがゆったりと流れる風情は何とも言えず、中部地区で知らない人はいないほどの名所です。


 


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今から約60年ほど前、ある人が当時の村長に就任、次の年から「みんなが一緒に交流できるところがあるとよいのだが」と考え、五条川の堤に桜の苗木を植え始めた。


 


当時はまだ戦後間もないころなので、みんな、桜を楽しむような余裕はない。「日影ができる」とか「土手が弱くなる」などとお役所はなかなか苗木を植えるのを認めない中、嘆願を繰り返し、自費で苗木を買って、植えていった。


 


それが今では全長が実に27キロメートルに及び、3500本の桜が咲き誇る。


 


彼の名前は社本鋭郎。彼は、村が大口町になった時の初代町長だが、就任する時の条件は「無報酬」だった。そして後年、「なぜ、苦労して五条川に桜を植えたのですか?」と聞かれて、「川への恩返しです」と答えている。


 


今では、日本の桜の名所100選に選ばれ、見物人は数知れない。多くの人の心を癒し、桜の下で花見を楽しみ、観光業も潤っている。でも、それは「結果」にしか過ぎない。


 


人間の文化は誰でも生み出すことができ、それは人間共通の財産だ。決して、五条川の土手に社本さんの親族がロープで囲って、入場料を取っているわけではない。あんなに苦労し、自腹を切り、植え続けた桜がこうして多くの人に楽しみと人生を与えたとしても、それは無償なのだ。


 


人間の知が働く学問、心の活動がもたらす文化と芸術、そして鍛錬による素晴らしいスポーツ・・・それらはみな人間共通の財産であり、その作品を作ってくれた人に深い感謝の気持ちを持つ人が多くても、それがなにかの報酬と結びついたものではない。


 


社本さんの名前は五条川の桜とともに永遠に多くの人の心に刻まれ、尊敬される。それで、それだけで人間の活動は良いのだ。


 


振り返ると、私たち科学者は一所懸命、夜の夜中に寒いキャンパスの中で一人、かじかんだ手でグラフにプロットする。そして、仮にその成果が出ても、それは「こんなに楽しい時を与えてくれた自然への恩返し」だから、名誉も地位も何も求めない。


 


それこそが人生である。


 


(平成2644日)


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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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