男子6年連続「サッカー選手」、女子19年連続「食べ物屋さん」 なりたいもの調査(産経新聞)
第一生命保険は7日、全国の幼児や小学生を対象とした「大人になったらなりたいもの」の調査結果を発表した。1位は男子が6年連続で「サッカー選手」、女子は19年連続で「食べ物屋さん」。男子の「電車・バスの運転士」が平成元年の調査開始以降最高の4位(前回5位)に躍進した。同社は「北陸新幹線開通やリニア新幹線などで乗り物への関心が高まったのでは」と分析している。
調査は26年7~9月に実施し、1100人の回答を集計し分析。刑事ドラマが多数放送される中、男子は3位の「警察官・刑事」を選択した子供の割合が6・9%となり、過去10年で最も人気を集めた。女子は幼児から小学6年生までの全年代で2~3位に「お医者さん」または「看護師さん」が入った。
今年の新成人が子供のころになりたかったものの変化も分析。新成人が当時小学3年生だった16年は、男子が日本人大リーガーの活躍を背景に「野球選手」が3年ぶりに1位に返り咲き、日本人研究者のノーベル賞受賞を背景に「学者・博士」の人気も高まっていた。女子の「お医者さん」人気は、このころから上昇したという。同社は「自ら見聞きしたものを判断材料に、時代の流れを敏感に察知する様子は当時も今も変わらない」としている。
こういうのはクラレによる調査が有名ですが、第一生命でもやっているようですね。平成元年の調査開始とのことで、四半世紀の蓄積があれば多少の意味も出てくると言えそうなものですけれど、どうなんでしょう。曰く「今年の新成人が子供のころになりたかったものの変化も分析」云々と、確かに過去の「子供」との比較からでも何か読めることはあるのかも知れません。しかし、せっかく規模の大きい組織が予算を組んで調査するのですから、もう少し素人では調べられないことをやってほしいなと思ったりもします。
たとえば毎年毎年「子供」を相手にアンケートを採るのではなく、調査対象の子供が5年後や10年後に「何になりたい」と考えているかを追うことができれば、もう少し社会を知る資料になり得るわけです。かつてサッカー選手になりたいと回答していた男の子、お店屋さんになりたいと答えていた女の子が就業年齢に近くなって「何になりたい」と回答するのか、そして実際に何に就いたのか――大手生命保険会社ならこれぐらいの追跡はできそうなものですし、結果を公表してくれれば色々と参考になりそうな場面は結構あるような気がします。
以前にも書きましたが、小学生ぐらいまでの「夢」であった職業に実際に就業した人って、どれぐらいいるのでしょうね。そもそも、小学生の時と同じ「夢」を抱いたまま高校生、大学生になった人ですら、多数派ではないのではないかと思われます。「子供」の時分に抱いた「大人になったらなりたいもの」が「大人になって実際に就いた仕事」と僅かでも相関関係があるのか、その辺りからして怪しいものです。せっかく企業がお金をかけて調査しているのに、やることは単なる人気投票にしかなっていない、それは他の会社でもよくあることですけれど、もったいない話です。
「その後」を追う調査って、もう少し世間で重視されるべきではないかと思います。たとえば中高年正社員が居座っているから若者の就業機会が損なわれている云々みたいな経済誌の与太話があって、その一方で正社員だろうが容赦なく会社から追い出しては若者向けの求人を出している、そして実際に採用数も会社の規模に比して著しく多い会社もあるわけです。ではトウの立った社員をクビにして若年層の雇用機会を創出している――すなわち日本的な経済言論の理想を体現している――会社に入った「若者」のその後とか、まとまった調査結果が出れば面白いことになるのではないでしょうか。