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トゥーレの王(森鴎外訳)

トイレで用足しの際に少しずつ読んでいる「ファウスト」だが、その最初のあたりに「トゥーレの王」が出てきて驚いた。大昔に「ファウスト」は読んでいて、また「名訳名詩集」という本で「トゥーレの王」も読んでいて、大好きな詩なのだが、これが「ファウスト」の中で少女マルガレーテが口ずさむ歌だとは知らなかった。たぶん、中学か高校くらいに「ファウスト」を読んだ時にはほとんど味読しなかった部分だったのだろう。まあ、若いころの読書とはそんなものだ。だから、名作文学(ほとんどは古典として残る)は再読する価値がある。

(引用)某サイトから採ったが、「盟」の読みは私が補足した。この部分は私が読んだ版では「盟を渝(か)へぬ」だったと思う。「かへせぬ」という言葉は文脈的におかしいのではないか。また、不規則な句読点はサイトの筆者が付けたものだろう。念のために言うが「妹(いも)」は妹背の「妹」で、「愛する女性」のことである。つまり、ここでは王妃か愛妾である。

昔ツウレに王ありき
盟(ちかひ)渝(かへ)せぬ君にとて
妹は黄金の杯を
遺してひとりみまかりぬ

こよなき寳の杯を
乾しけり宴の度毎に
此杯ゆ飲む酒は
涙をさそう酒なりき

死なん日近くなりし時
国の県の数々を
世嗣の君に譲りしに、
かの杯は留め置きぬ。

海に臨める城の上に
王は宴を催しつ。
壮士あまた宮のうち
御座の下に集ひけり。

これを限の命の火
盛れる杯飲み干して、
その杯を立ちながら
海にぞ王は投げてける。

落ちて傾き、沈み行く
杯を見てうつむきぬ。
王は宴の果ててより
飲まずなりにき雫だに。
 

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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