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気の赴くままにつれづれと。
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日本でも当然、「ミステリーという『新分野』に接した人々の、燃え立つような興奮」の時代があった。
その中でも有名…なように思えるが、あまり知られていない「ホームズと岡倉天心」の話、以前このブログではちょっと概要を紹介したことがあったが、そもそもその元ネタを探していた。
ようやく、元のテキストがどこにあるかを知ったので紹介したい。
(※【注意】最近の当ブログ、リンクを貼るとURLは正常なのに404になったりして読めませんが、実際は先方のページは生きています。ご注意の上検索など適宜工夫を)
http://blog.livedoor.jp/bsi2211/archives/52111605.html
岡倉一雄『父岡倉天心』(中央公論社・覆刻版)からエピソード部分を引用を交えながら簡略に記す―
(略)
ある晩、一雄は天心から、漢学と英文について今どんな本を習っているのか?と尋ねられる。漢学について答えると、では英文はどんなものを読んでいるかというので、「はい。ドイルの『アドヴェンチュア・オヴ・シャロック・ホームズ』です。」
天心は、これに答え、ドイルの小説はおいらも好きで、書棚に3,4冊もっているから、ママさん(元子)や末娘・おこま(こま子)に話を聞かせてやると言って、一雄に院の二階の書斎から『スタディ・イン・スカーレット』もってこさせ、「英国の大衆作家中、随一といわれたドイルの探偵本」をくりひろげ、巧妙な座談で、面白く話して聞かせた。犯人が逮捕されるクライマックスになると、これから犯人の身の上話になるが、今日はもう晩いから続きは明日―
―と、言うと、こま子は続きが聞きたくてしかたがない。天心に催促すると、天心は、それならママさんにいって、もう一本お酒をもってこいと言う。これは天心の策戦で、当時、医者から酒2本と決められていたので、話の続きを聴きたがっていた元子とこま子をじらして、もう一本お酒をせしめようという算段。この策戦が効を奏して、追加のお酒を飲みながら、『スタディ・イン・スカーレット』を最後まで一気に語り終える。
これが第一夜。第二夜が『サイン・オヴ・フォア』。第三夜が短編集『アドヴェンチュア・オブ・シャロック・ホームズ』の中の『イレーネ・アドラー事件』と『赤髪同盟会』の2譚。例によって話の途中で、お酒を1,2本要求してお決まり以上のお酒をせしめる。こういう晩が十数日続き、種本がつきると、「まだこのほかに、同じドイルのシャロック・ホームズもので、『バスカーヴィル家の犬』というものもあり、『メモアーズ・オブ・シャロック・ホームズ』という短編集もある。しかし、本が手もとにないから、話はできないよ。」
こう言われると、話を聞きたくてしかたのない元子は、さっそく丸善へ駆けつけ、「シャロック・ホームズの一代記をください」と言って番頭さんを驚かせた。幸い勘のいい番頭だったらしく、元子は首尾よく『メモアーズ・オブ・シャロック・ホームズ』を手に入れ、その晩から天心の「妙味ある独特の話術」が始まり、十数日続いたが、とうとう種本がつき「連続講義」は幕を閉じた、という。
どうですか。
「まんが道」にも負けず劣らずの、一つの娯楽ジャンルに初めて接した読者、ファンの衝撃を語る挿話で、読み直すとじんわりと感動する。
さまざまな文学賞も価値があるが、続き読みたさに天心の妻がお燗した「もう一本のお銚子」こそ、ホームズやミステリー全体への、巨大な勲章と思うのです。
こんな風に世界各地で「娯楽の相互交流、輸出入」が行われ…結果、また巨大な物語が生まれる。”クールジャパン”も、その一端を担えれば御の字ではなかろうか。
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