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「カラマーゾフの兄弟」テレビドラマ化

おおっ、こいつは凄いぞ、と思ったが、夜の11時台では私は起きていられる時間帯じゃない。たぶん、見られないな。しかし、青少年の皆さんにはぜひ見てほしいし、原作もぜひ読んでほしい。あれほどの長編を読む「読書体力」は、年を取ると無くなるから、読むのは若いうちです。私は高校の図書館の本で、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」とトルストイの「戦争と平和」などは読んだが、あの読書の時間こそが人生最高の至福の時間であった。それにくらべると、現実の自分の人生なんて、何の輝きもない。それは当然の話でもあるのだ。現実人生には、何のドラマも無くて当然だし、その方がある意味では幸せでもある。ドラマらしいドラマとは、心を揺さぶる事件、つまり基本的には人間の不幸を前提としているのだから。ロミオとジュリエットも最初から周囲に理解されて結婚しました、ではドラマになるはずはない。
読書とは、現実人生よりも高次元の人生を我々の頭の中で体験させてくれるものである。
世界最高の作家の提供してくれる「驚異的な人生体験」が味わえるのに、それを知らないままで終わる人生なんて、私にとっては最悪の人生なのであり、ドストエフスキーとトルストイを読めるだけで、我々の平凡な人生は生きるに値する。
まあ、しかし、原作小説を読んで、読者各自が頭の中に創り出す世界とは違い、テレビドラマや映画は生身の俳優が演じるというだけで、もはやかなりな価値低下が起こるのは避けがたい。特に、日本を舞台にし、話も現代の話にアレンジするようだから、ほとんど「カラマーゾフの兄弟」の原案による二次創作ということになるし、二次創作がオリジナルのレベルに達することは、まず滅多に無い。オリジナルがハイレベルであればあるほど、二次創作は残念なレベルになるのは仕方のないことだ。
せめて、脚本や監督が才能のある人間であればいいな、と願うしかない。
虚淵玄あたりであれば、原作をうまくアレンジして別の傑作を作れるかもしれないが、脚本は誰が担当するのだろうか。
写真で見る限り、長男のミーチャ(ドミートリー)役らしい斉藤工は、なかなか下品さや情熱、野蛮な活力のありそうな感じの顔で、悪くはなさそうだ。次男のイヴァン役の市原隼人は、この顔でどの程度の哲学的知性と虚無性を演じられるか、不明。若い頃の仲代達矢なら文句なしだったのだが。三男アリョーシャ役の林遣人は天使的風貌かどうかは別として、まずまず端正な顔だちだから、これも悪くはなさそうだ。父親役にはもっと下品かつひねくれた風貌の役者が望ましいのだが、成否は吉田鋼太郎という役者の演技力如何だろう。昔なら、小沢栄太郎とか金子信男とか、こうした役柄にふさわしいバイプレーヤーがたくさんいたのだが、今の日本テレビ映画界の役者には不案内なので、誰がいいかは分からない。政界ならば、小悪党風貌の政治家は無数にいるのだが。(笑)
私が演技者なら、一番演じてみたいのは私生児スメルジャコフの役だが、卑屈さと高慢さ、鋭い知性と道徳的退廃を併せ持つ複雑な演技ができるのは、まあ松山ケンイチあたりだろうか。悪魔的雰囲気を持つ俳優はけっこういそうな気がするのだが。案外、お笑い界の人間は性格が悪そうだから、この役にぴったりなタレントも探せるかもしれない。
しかし、この作品のドラマの隠れたエンジンは父親と長男の二人に惚れられて、殺人事件のきっかけになるグルーシェンカという女性なのだが、妖婦性と純心さの二面性を表現できるレベルの女優は誰がいるのだろうか。記事では、グルーシェンカ役が不明であるし、スメルジャコフ役も不明である。
まあ、関西での放送があるかどうかも分からないのだが、ドストエフスキーファンとしては、詳細や先行きが知りたい話題である。


(以下引用)



注目ドラマ紹介:「カラマーゾフの兄弟」 ドストエフスキーの名作を市原隼人主演で映像化
2013年01月12日

連続ドラマ「カラマーゾフの兄弟」の会見に出席した(左から)斎藤工さん、市原隼人さん、林遣都さん、吉田鋼太郎さん
写真特集へ
 俳優の市原隼人さんが主演を務めるフジテレビ系連続ドラマ「カラマーゾフの兄弟10+件」が12日、スタートする。19世紀のロシア文学を代表する作家、フョードル・ドストエフスキーの最高傑作といわれる同名長編小説を、舞台を日本に置き換え映像化した作品で、同局のドラマ10+件枠「土ドラ」の第4弾となる。市原さんが同局の連ドラで主演するのは、04年の「WATER BOYS(ウォーターボーイズ)2」以来約9年ぶり。
 ドラマ10+件は、父殺しの容疑をかけられた3人の異母兄弟を中心に、不況、政治混迷、格差社会、教育問題、就職難、先の見えない若者たちといった現代が抱える影を描く。第1部では、事件の日に至るまでの兄弟一人一人の足跡をたどり、父への殺意の芽生えを幼少にまでさかのぼり浮かび上がらせる。第2部では事件当日を描き、第3部では取り調べから判決までの真相解明を描いていく3部構成の心理ミステリーとなっている。
 市原さんは、3兄弟の次男で、ストレートで司法試験に合格し、東京都内の法律事務所で働く若手弁護士の黒澤勲(くろさわ・いさお)を演じる。勲は理知的で理詰め、感傷を嫌うクールなニヒリスト。絶対的な支配力を持っている父に激しい嫌悪を抱いているという役どころ。また、失業中でヒモのような生活をしているいいかげんで夢見がちな性格の長男・満を斎藤工さん、医大4年生の三男・涼を林遣都さん、父親の黒澤文蔵を吉田鋼太郎さんが演じる。
 第1話は、ある海沿いの町で不動産業と建設業を営む黒澤家当主、黒澤文蔵がある日、自宅の寝室で奇妙な置き方をされて殺されているのが発見された。警察はそれぞれに殺す動機がある文蔵の息子たち、満、勲、涼の3兄弟に容疑者として任意同行を求め、取り調べる。警察がつかんだその動機とは、文蔵が殺される2週間ほど前に開催された黒澤家の家族会議が発端だった……というストーリー。
 ドラマ10+件は12日から毎週土曜午後11時10分放送。(毎日新聞デジタル)







(追記)


「カラマーゾフの兄弟」を読んでみたいが、その長大さに恐れをなしている人は、「徽宗皇帝のブログ」の「小説翻案」というカテゴリーに「カラマーゾフの兄弟」をわずか10ページ程度に圧縮した「業(カルマ)家の兄弟」というのがあります。もちろん、無茶な試みだが、そのエッセンスは味わえるかと思うので、お暇ならどうぞ。
(「酔生夢人=徽宗皇帝」より)







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仙人
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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