「風の中の鳥」は、物語が半分、作者の駄弁が半分という「半エッセイ小説」で、フィールディングの「トム・ジョウンズ」という偉大な先例をその部分でだけは真似している。中身は実は「権力と政治」についての考察が基本なのだが、物語部分はかなりいい加減である。それに最初の部分は文章も固くて読みづらいし、エロ話めいた部分もかなりあるので、18歳未満禁止と断っておいたほうがいいかもしれない。また、この話は女がかなりひどい目に合う小説だし、大量に人が死ぬ。そういう話が嫌いな人は読まないほうがいいかもしれない。逆に、「そういう話」を期待すると、かなり期待外れになるはずだ。というのは、この話の中のエロも死体もいわば「統計レポート」的な報告にしかすぎないのであり、煽情的描写をする筆力など作者にはまったく無いのだから、それらはただの「思考材料」として書かれているのである。そういう変な小説だが、私にとっては書いていて楽しかった小説である。書いた本人同様にこの小説を楽しんでくれる人が一人でもいれば幸いだ。
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