その二十五 滅亡のきざし?
「私の父デロスは、エスカミーリオの陰謀(いんぼう)で殺されたのだ」
ヴァルミラは、吐き捨てるように言いました。
「まさか、そんな! 味方がデロス様を殺すなんて」
「私がグリセリードにもどったことを知ったら、エスカミーリオは私をも殺そうとするはずだ。いや、その前に私のほうがあいつを殺すつもりだがな」
ヴァルミラは、にやっとものすごい微笑(びしょう)をうかべました。
「なんということを。ヴァルミラ様、そんなことはおやめください。どこか田舎にかくれていれば、大丈夫です。いいえ、なんなら、ここにずっといてかまいません。あなたお一人くらい、私が食べさせます」
乳母のエミリアは大きな胸にヴァルミラを抱きしめて、泣きながら言います。
「ありがとう、エミリア、でも、ここにいると、お前にもめいわくがかかる。人のうわさになる前に私たちはでていくよ」
食事のしたくのためにエミリアがでていくと、ピエールがヴァルミラに言いました。
「この子をどうしようか。本当に女王の子なら、俺たちの話を聞かれた以上、放すわけにはいかんし」
「あんたたちが何をする気かしらないけど、とにかくこの国にそむくつもりだってことはわかるわ。みんなつかまって死刑になるにきまってるわよ」
アリーナが、つっかかるように言います。
「アリーナ、お前の母親は、ロドリーゴの言うがままになって、良くない政治をやっているのだ。そのために人々は苦しみ、前の戦では何万人もの人が無意味に死んでいった。私の恋人のマルシアスもだ」
アリーナは、ヴァルミラの言葉に黙(だま)りこみました。
「グリセリードはあまりに大きくなりすぎた。グリセリードのほとんどは、グリセリードに征服(せいふく)された小国だ。パーリのようにな。ヴァンダロス大王の時代には、征服された国はみなグリセリードの一部として等しくあつかっていたが、今はちがう。征服された国々の人々は奴隷のようにあつかわれ、グリセリードをうらんでいる。そのうらみがいつか爆発(ばくはつ)して、この国をほろぼすだろう。私がアルカードからはるばる旅をしている間にも、すでに周辺の国々で農民や征服された国々の人々の反乱が起こっていた。もちろん、それらは、強大なグリセリードの軍隊の前にほろびさったが、私は確信した。グリセリードの命運(めいうん、運命のこと)はすでにつきていると」
ヴァルミラは、むしろ静かな、悲しみをたたえた口調(くちょう)で言いました。
「みんなロドリーゴが悪いのよ。お母様は悪くないわ」
アリーナはつぶやくように言いましたが、その言葉には力がありません。
他の三人も、アリーナとヴァルミラが気の毒で、なんと言っていいかわかりません。
「私の父デロスは、エスカミーリオの陰謀(いんぼう)で殺されたのだ」
ヴァルミラは、吐き捨てるように言いました。
「まさか、そんな! 味方がデロス様を殺すなんて」
「私がグリセリードにもどったことを知ったら、エスカミーリオは私をも殺そうとするはずだ。いや、その前に私のほうがあいつを殺すつもりだがな」
ヴァルミラは、にやっとものすごい微笑(びしょう)をうかべました。
「なんということを。ヴァルミラ様、そんなことはおやめください。どこか田舎にかくれていれば、大丈夫です。いいえ、なんなら、ここにずっといてかまいません。あなたお一人くらい、私が食べさせます」
乳母のエミリアは大きな胸にヴァルミラを抱きしめて、泣きながら言います。
「ありがとう、エミリア、でも、ここにいると、お前にもめいわくがかかる。人のうわさになる前に私たちはでていくよ」
食事のしたくのためにエミリアがでていくと、ピエールがヴァルミラに言いました。
「この子をどうしようか。本当に女王の子なら、俺たちの話を聞かれた以上、放すわけにはいかんし」
「あんたたちが何をする気かしらないけど、とにかくこの国にそむくつもりだってことはわかるわ。みんなつかまって死刑になるにきまってるわよ」
アリーナが、つっかかるように言います。
「アリーナ、お前の母親は、ロドリーゴの言うがままになって、良くない政治をやっているのだ。そのために人々は苦しみ、前の戦では何万人もの人が無意味に死んでいった。私の恋人のマルシアスもだ」
アリーナは、ヴァルミラの言葉に黙(だま)りこみました。
「グリセリードはあまりに大きくなりすぎた。グリセリードのほとんどは、グリセリードに征服(せいふく)された小国だ。パーリのようにな。ヴァンダロス大王の時代には、征服された国はみなグリセリードの一部として等しくあつかっていたが、今はちがう。征服された国々の人々は奴隷のようにあつかわれ、グリセリードをうらんでいる。そのうらみがいつか爆発(ばくはつ)して、この国をほろぼすだろう。私がアルカードからはるばる旅をしている間にも、すでに周辺の国々で農民や征服された国々の人々の反乱が起こっていた。もちろん、それらは、強大なグリセリードの軍隊の前にほろびさったが、私は確信した。グリセリードの命運(めいうん、運命のこと)はすでにつきていると」
ヴァルミラは、むしろ静かな、悲しみをたたえた口調(くちょう)で言いました。
「みんなロドリーゴが悪いのよ。お母様は悪くないわ」
アリーナはつぶやくように言いましたが、その言葉には力がありません。
他の三人も、アリーナとヴァルミラが気の毒で、なんと言っていいかわかりません。
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