まあ、阪大教授によるBCG有望説が加わった以外は以前に紹介した幾つかの記事と変わるところはないが、できればBCG効果は何年くらい続くのかくらいは書いてほしいところだ。
ただし、細菌でもウィルスでも関係なく肺炎抑止効果がありそうだ、というのは嬉しい情報だろう。
BCGによる「獲得免疫」であるのに「生まれた時から持つ」自然免疫を高める、というのを疑問に思うのは、まあ重箱の隅をつつくようなものか。まあ、そんなのに拘るのは、私のようなへそ曲がりの「言葉厳密主義者」くらいだろう。
(以下引用)
結核の予防接種で使われる「BCGワクチン」。細い9本の針を刺す“ハンコ注射”といえば、思い出す人も多いだろう。このBCGワクチンが新型コロナウイルスの感染を予防するのではないかと、一部の専門家の間で話題になっている。
【新型コロナウイルスの顕微鏡写真はこちら】
BCGは古くからあるワクチンの一つ。わが国では現在、公費でまかなわれる定期接種として、生後11カ月までに1回接種することになっている。
「国によって事情が異なり、予防接種が広く行われている国もあれば、一部に限られている国、ほとんどされていない国があります。興味深いことに、BCGの予防接種を受けている国のほうが、受けていない国よりも感染の広がりが遅いことがわかったのです」
こう話すのは、免疫学の第一人者で、大阪大学名誉教授の宮坂昌之医師だ。この現象をホームページで紹介した豪州在住のJUN・SATO(ジュン・サトウ)氏によるデータを基に改めて独自に解析したところ、感染の広がりだけでなく、死亡率にも同様の傾向が見られたという。
「BCGを接種していないイタリアでは、100万人あたりの死者数が217.4人。これに対して接種している日本は0.5人、台湾は0.2人でした」
一方、日本と同じように接種しているポルトガルの死者数は17.6人と高めで、いまは接種をしていないドイツでは11.3人と少なめといった例外もある。だが、免疫の仕組みを踏まえても「BCGは期待できるかもしれない」と宮坂医師。
「昨年、オランダの研究チームが、BCGワクチンが自然免疫を高めることを突き止めたのです。途上国でも、BCGワクチンを打った子どもは感染症の死亡率や重症化率が下がることが報告されています」
免疫には、生まれたときから持つ「自然免疫」と、生後に病原菌にさらされて得られる「獲得免疫」がある。自然免疫は体に入ってきた病原体すべてに反応し、排除しようとする。つまり、未知なるウイルスの新型コロナにも免疫が働きやすいのだ。BCGワクチンは結核菌に対する獲得免疫だけでなく、自然免疫も高める可能性があるという。
豪州ではすでに、医療従事者を対象にBCGワクチンの有効性をみる治験が始まった。
「BCGは昔から使われているワクチンで、安全であることは確か。あとは、どれくらいの量を打てばいいのか、どんな人に効果があるのかなどの検証が必要です。また、BCGは子どもの予防接種のために限定生産されており、短期的には大量生産できません。そのあたりも考慮すべきことでしょう」(宮坂医師)
(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2020年4月17日号