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上級国民に欠けているのはまともな「想像力」

小田嶋師の「ア・ピース・オブ・警句」から転載。
面白い(もちろん、有益だ、という意味での面白い)部分はいろいろあると言うか、全体が面白いのだが、この部分は特に、カネの無い人間の心理が非常にリアリティをもって描かれていて面白い。世間の政治家や官僚や経営者の多くに欠けているのが、そういう想像力である。
ここ以外にも、「自粛要請」という、「強制ボランティア」みたいな言語矛盾の話も面白いが、それはまた別に書くかもしれない。私も「自粛要請」の言語矛盾の件は書こうかなと思っていたのである。しかし、小田嶋師が見事に書いたので、書く必要も無い気もする。


(以下引用)赤字部分は夢人による強調。



 さて、自治体から各業界に向けての休業要請が2週間先延ばしにされたことで、何が起こるのかを考えてみよう。



 いや、考えるまでもないことだ。お国や自治体から休業補償を約束されていない状況下で、休業を余儀なくされた人々は必ずや腹を立てる。これは、人間として当然の反応でもあれば、生物としての必然でもある。
 で、腹を立てた結果どういう行動に出るのか。
 私だったら、自暴自棄になるか、そうでない場合、無気力に陥るだろう。



 どっちにしても、ろくなことにはならない。
 おとなしいと言われている私以外の平均的な日本人とて、永遠におとなしいわけではない。



 休業補償が行き届かない状況下で収入減を強いられた多くの日本人は、おそらく、なんとかして働こうとするはずだ。休業要請を強いられていようが外出自粛を促されていようがおかまいなく、だ。



 緊急事態宣言は、追い詰められた人々の耳には届かない。



 なんとなれば、今日明日の食い扶持に困る事態に追い込まれた人間にとって、現段階では8割が軽症で済むと言われているウイルス感染なんかより、貯金が底をつくことのほうがずっと恐ろしい身に迫る恐怖だからだ。



 私にも経験のあることだが、貧乏は人間のメンタルを削る。このことは何度強調しても足りない。最低限の貯金を持っていない人間は、最低限の良心を持ちこたえることができなくなる。さらに、ある程度以上の借金を抱えた人間は、カネのことしか考えられなくなる。つまり、貧困に陥った人間は、事実上思考力を失う。



 もちろん、気力も失うし希望も持たなくなる。
 カネがほしいということ以外はほとんどひとつも考えられなくなる。



 そういう人間がどういう行動に出るのかは明らかだ。当たり前の話だが、彼らはカネを求めて街をさまよい歩く。



 ウイルス?
 そんなものはまるで問題じゃない。



 病気で死ぬことをほのめかされても、まるで恐ろしいとは思えない。オレは現実にいま死ぬことよりもキツい貧乏に苦しんでいる。それに比べればウイルス感染なんてファンタジーでしかない。オレは少しも恐ろしくない。正直なところを述べるに、他人に感染させることもこわいとは思えない。どちらかと言えばざまあみろと考える。ほめられた考え方でないことはわかっている。でも、いまのオレには別の考え方はできない。オレをマトモな人間に戻したいのなら、とにかくカネをつかませてくれ。カネさえあれば、マトモな良心を取り戻せるかもしれない。話はその後だ。



 と、政府が給付策を誤れば、こういう人たちが数十万人単位で街に溢れ出ることになる。

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酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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