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気の赴くままにつれづれと。
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高齢になれば動脈硬化が進み、血圧が高くなるのは自然なことです。それを無理に下げると一体どうなるか…。一方百寿者の身体的な自立度を調べたところ、上の血圧が高いグループで驚きの結果が。
残りの人生を楽しんで生きる高齢者が一人でも多くなってほしい、という目的で書かれたのが『医者にヨボヨボにされない47の心得 医療に賢くかかり、死ぬまで元気に生きる方法』。日本で高血圧の人は20歳以上で2人に1人、高齢者の問題だけではないかもしれません。
動物のキリンは、上の血圧が250、下の血圧が200あると言われています。2mある長い首の上にある脳まで、重力に逆らって血液を届けるには、高い血圧でなければならないということです。必要があって高くなっている血圧を、薬で下げてしまったらどうなるか。キリンは立っていられなくなるでしょう。
私は獣医ではありませんが、もしキリンが患者なら、キリンの事情を無視して、無理に血圧を下げるようなことはしません。
ところが、日本の高齢者は、高齢者特有の血管の事情を無視して、高血圧の治療をされています。どういうことか説明しましょう。
若いころの血管は、血管の壁が薄くて柔軟性に富んでいます。ところが、年齢を重ねるにつれて柔軟性は失われ、だんだんと硬く厚くなり、動脈硬化と呼ばれる状態になります。若いころは張りのあった皮膚が、年齢とともにしわが目立ってくるのと同じです。血管の動脈硬化は、すでに小学校の終わりぐらいから少しずつ始まっていると言われ、年齢を重ねて生きていくうえで避けられない現象です。
動脈硬化が進んだ状態の血管で、全身に血液を届けるにはある程度血圧が高くなければなりません。血圧を上げないと、体のなかでも特に大切な脳に酸素や栄養が届かなくなってしまうからです。
だから、血圧の値には年齢を考慮することが重要になります。かつては上の血圧が年齢に90をプラスした数値くらいまでなら大丈夫と言われていました。60歳なら150、70歳なら160、80歳なら170でもよしとされていたのです。1987年に厚生省(当時。現・厚生労働省)が示した基準は180でしたが、根拠も示されないまま160、140へと下がり、今では20歳の若者も90歳の高齢者も同じ基準値が使われています。
高血圧の人は推定約4300万人、20歳以上の2人に1人と言われますが、これは基準値を引き下げたことでつくり出された数字にすぎません。血圧の基準値を10下げると、新たな高血圧患者が1000万人生まれるという計算さえあります。
こうした血管の事情を抱えた高齢者が、むりやり薬で血圧を下げてしまうと、脳への酸素や栄養が滞ります。下げた血圧が基準値内になれば、医者は「よかったですね」と言いますが、実質は低血圧の状態になっている可能性があります。
低血圧の代表的な症状には、疲れやすい、だるい、めまい、立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、不眠、胃もたれ、吐き気、発汗、動悸、不整脈などさまざまなものがあります。立ち上がったときに起立性低血圧が起こると、ふらついて転倒し、骨折する危険性もあります。
ただ、血圧の薬を飲んで、これらの症状をはっきり自覚する人はあまり多くはないかもしれません。薬によるだるさなどの症状というのは慣れてしまうとあまり感じなくなってしまって、それが年のせいのように思われてしまうからです。そして、薬をやめてはじめて、薬のせいであんなに元気がなかったのだと気づくことがとても多いのです。コロナ禍でマスクをしていても苦しいと感じなかったのに、はずしてみると酸素量が増え呼吸も楽で、こんなに空気がさわやかなんだと感じるのと同じことと思います。
私のように血圧が200近くあり、血管年齢が80歳とか90歳と言われるほど動脈硬化がひどい場合は、血圧を140に下げると如実に体調が悪くなりました。これでは仕事ができないので、薬を減らして170くらいになるようにしています。やはり、血管の壁が厚くなっている場合は、ある程度血圧が高くないと脳に十分な酸素や栄養が届かないというのは事実なのだと自覚しました。
私は、高齢者の患者さんには、血圧が高くても気にしなくていいと言っています。みんな血圧が高いと血管が切れて脳出血になると恐れていますが、今は栄養状態がよくなっているので血管が切れることはめったにありません。1960年には人口10万人当たり脳出血の死亡者は120人を超えていましたが、2020年には25人前後と激減しています。
むしろ血圧を薬で下げるほうが、脳の血流が減り、血管が詰まりやすくなって危険です。ある比較試験では、高血圧の人に降圧剤を飲ませたら、血管が詰まる脳梗塞が50%も増えています。高齢者の血管はある程度動脈硬化が進んでいるので、薬でむりやり血圧を下げると血流がゆるやかすぎて、脳の血管が詰まってしまったのです。
日本高血圧学会の大規模な比較試験では、上の血圧が160以上ある4400人を2グループに分け、一方は140未満まで下げる厳格な治療を行い、もう一方は140~160のゆるめの治療を行いました。その結果、ゆるめの治療群の総死亡数42人に対して、厳格な治療群は54人と、血圧を厳しく下げたほうが死亡する人が多いということがわかりました。
血圧は、コレステロールと同じように、動脈硬化を進める「ワルモノ」にされがちですが、血圧が上がること自体が悪いわけではありません。漢方ではその人の体質(=証)を見極め、活力を上げたほうがいい人には、血圧を上げる作用のある漢方薬が処方されます。
日常生活のさまざまな要因で血圧は変動します。ストレスや睡眠不足、痛み、寒さといったことでも高くなる一方、運動したり、人と会話したり、おいしいものを食べたりと、いきいきと活動したときにも血圧は上がっているのです。高齢になっても人と会話を楽しんだり、階段の上り下りができる生活、つまり血圧が上がる生活ができること自体、すばらしいと思いませんか。
実際、慶応義塾大学医学部が100~108歳の百寿者163人を対象に、身体的な自立度を調べたところ、最も自立度が高かったのは上の血圧が156~220のグループでした。認知症の程度も、血圧が高いほうが軽かったのです。
くり返しになりますが、高齢になれば血圧が高くなるのは自然なことです。薬を飲んでも、食事制限をしても、生きていれば血管が柔軟性を失っていくのは避けられません。動脈硬化のいちばんの促進因子は加齢だからです。その事実を受け入れて、全身、特に脳への血液が滞らないようにすることや、血圧が高くなっても血管が破れないようにしっかり栄養をとることのほうが、賢い年のとり方だと思います。キリンがあの血圧で脳卒中にならないのは、血管が丈夫だからなのです。
続きは<「減塩生活」は60歳で卒業しないとマズい。食塩が少ないほど寿命が縮まると心得よ>にて公開中。
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