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メモ日記8 (#19)

#19   読書の不利益

読書の利益についてはよく言われるが、不利益についてはあまり言われない。せいぜいエロや暴力を描いた「有害図書」の青少年への影響を、ヒマなおばさんたちが時々騒ぐくらいなものである。しかし、一見真面目な本のほうがかえって有害なこともある。「有害図書」のほうは、読むほうも最初からその気で読むから案外害はないものだ。本当に有害なのは、真面目な本の体裁を取って人を迷わせる言説をなす本である。新興宗教の本や、自分の人生を語って「生きる道」を人に説く本の類がそれだ。とくに、自分は悪の道から更生して、こんな立派な人間になりましたという自己宣伝の本が案外ベストセラーになったりするのは困ったことで、世間の青少年に、罪を犯してもいつでもリセットできるじゃないかと世間を甘くみる考えを植え付けてしまう。「美徳は切り売りできない」とはバルザックの名言だが、犯罪の被害者のことを考えれば、犯罪者には処罰を与えるべきであり、安易に「更生」されては被害者の立つ瀬はない。一度犯した罪は、どのようにしても消えるものではないと考えるべきなのである。たとえ、その人間が再起して教師になろうが司法試験に受かって弁護士になろうが、他人に説教できる資格などない。まあ、そんなのに感動する人間も人間だが。
世間の人間が権威に弱いことは驚くほどで、学者とか宗教家とか弁護士とか大会社社長の発言だとありがたく拝聴し、それに騙される。それこそが読書の弊害だろう。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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