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「魔群の狂宴」18



・同日夕刻、粗末な荷馬車を駆って札幌市内に向かう藤田。荷台の「荷物」には覆いがかけられている。遠景に沈んで行く夕日。
・市街地が見える小さな丘で小休止する藤田。ごく平静な顔で市街地を見て「まだ始まっていないか。間に合いそうだな」と呟く。物凄い色の夕焼け。

・札幌の東の端にある高級ホテル最上階の一室。窓からは札幌市が一望できる。
・窓越しに見える、部屋に入って来る銀次郎と理伊子。夕食の後である。
・同じく窓越しに。抱き合って接吻するふたり。
・札幌市の或る工場。壁に積まれた可燃物の小さな山に点火する誰かの手。小さな火が生まれ、それが大きくなって壁に移る。
・ベッドで抱き合う銀次郎と理伊子。体が映るのは最初だけで、あとはふたりの、それぞれの表情だけ。銀次郎の愛撫を受けて陶酔する理伊子の表情、それと対照的に、銀三郎の顔に或る「焦り」と苛立ちの表情が浮かぶ。

・ベッドルームの戸を開けて、ガウン姿の理伊子の姿が現れる。その顔に浮かぶ失望感。
・窓の外の夜景を無表情に眺める理伊子。
・札幌の夜の闇の中に、小さく「動く灯り」が現れ、それがしだいに広がっていく。
・銀三郎が理伊子の背後に現れ、彼女の首筋に接吻する。何の感動も無く、それを受ける理伊子。
銀三郎「済まない」
理伊子「何を謝るの」
銀三郎「君とこうなったことだ」
理伊子「私たち、どうなったの?」
銀三郎「君の名誉を失わせた」
理伊子「最初から覚悟していたことよ。あなたには何の責任もない」
ふたり、沈黙する。
銀三郎(窓の外を眺めて)「火事のようだな」
理伊子「幸い、私たちの家の近くではなさそうね。でも、このホテルでこのまま死んだほうが、私は幸せかもしれない」
銀三郎「それほど僕は君を失望させたのか?」
理伊子「失望? 私はただ夢を見ていただけよ。あなたの奥さんみたいに」
銀三郎(ぎくりとして)「君はあれに会ったのか」
理伊子「あの人こそ、一番幸せな人ね。永遠に夢の中で生きている」
沈黙する銀三郎。その中で去来する思いは、その表情からは分からない。

(このシーン終わり)

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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