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記憶の話

澁澤龍彦の昔の文庫本の一節に「レミニッセンス」という言葉がカッコ内に(無意識的記憶)と注釈されて出てきて、長い間うっすらと気になっていたが意味を知らなかった言葉がひとつ解明された。この無意識的記憶には、人類の遺伝子の中に過去の類人猿時代から延々と刻まれたものもあるのではないか。それが「恐怖」の根底にあるだろう、というのも澁澤龍彦が同じ文章の中で書いていることである。そして、自己保存の本能と恐怖は表裏関係にある、というのが(私流に解釈した)彼の説だ。まあ、あらゆる人間の営為、つまり文化が恐怖から生まれたとまでは思わないが、人間の行動の根底には自己保存の本能があり、それは「自分が世界から消される」という恐怖を伴っているとは言えそうだ。
確か仏教の「阿頼耶識」が、この無意識的記憶のことだったと思うが、阿頼耶識を意識の表面に浮かび上がらせることができたらさぞ面白いと思うが、あるいは恥ずかしさや恐怖のあまりに死にたくなるだろうかwww 私のように自分の経験さえほとんど記憶できない人間は恵まれているのか、不幸なのか、どちらだろう。実際、私は自分の過去を考えることがまったく無い(というか、覚えていない)人間なので、考えるのはその時その時で「手近にある問題」だけなのである。世の中には一度読んだ本の一字一句すべて記憶しているという超人的な記憶力の持ち主もいるらしいが、そういう人間が偉大な業績を残したという話もあまり聞かないようだ。記憶力と思考力は別だということか。

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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
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